不動産売却のノウハウ
マンションを売却するときには、さまざまな税金がかかります。特に最近はマンションの価格が高騰していることもあって、購入したときより高く売れるケースもあります。そういったときは、売却益に対して税金がかかるため注意しましょう。
マンションの売却でかかる税金を、例をもとにわかりやすく解説します。マンションの売却予定がある方は、あらかじめチェックしておきましょう。
不動産売却 費用・税金2024年3月8日
マンションを売却したときにかかる主な税金は以下の通りです。
それぞれの税金について解説しましょう。
印紙税とは契約書や領収書などの文書を作成した場合に、その文書に課される税金です。不動産売却では、不動産売買契約書や領収書などが対象となります。
ただし、領収書は個人がマイホームなどを売却した場合は経済活動に該当しないため、買主に渡す領収書に印紙税がかかりません。
マンションを売却した場合の印紙税は、契約書1通につき下表の通り課税されます。
記載された契約金額 | 印紙税額 |
---|---|
10万円以下 | 400円 |
10万円超え 50万円以下 | 築1年 |
50万円超え 100万円以下 | 1000円 |
100万円超え 500万円以下 | 2000円 |
500万円超え 1000万円以下 | 1万円 |
1000万円超え5000万円以下 | 2万円 |
5000万円を超え 1億円以下 | 6万円 |
出典:国税庁「印紙税額」※令和6年3月31日までの間に作成されるもの
納税方法は、原則、課税文書に印紙税額の収入印紙を貼り付け、消印することで納付したとみなされます。
法律で登録免許税を支払う義務があるのは、登記を受ける人と定められています。簡単に言うと、その登記を受けることによって「得をする」人が納付すると考えておきましょう。
したがって、住宅ローンが残っている物件を売却する場合に行う抵当権抹消登記は、売主が支払うのが一般的です。 所有権移転登記では所有権を得ることにより、第三者に所有者であることを証明できる買主が支払います。
譲渡所得税は、不動産などの資産を売却して利益が発生した場合、その所得に対して課税される税金です。したがって売却益が赤字の場合は申告する必要はありません。
譲渡所得税率は不動産の所有期間で変わり、以下のような税率です。所有期間が5年を超えると、税率が約半分も低くなります。
【譲渡所得税率】
所得税 | 復興特別所得税 | 住民税 | 合計 | |
---|---|---|---|---|
短期譲渡所得の税率 (所有期間が5年以内) |
30% | 0.63% | 9% | 39.63% |
長期譲渡所得の税率 (所有期間が5年超え) |
15% | 0.315% | 5% | 20.315% |
復興特別所得税は令和19年まで、各年分の基準所得税額の2.1パーセントを所得税とあわせて申告・納付します。
所有期間の判断は、不動産を売却した年の1月1日時点で5年を超えているかどうかです。
例えば、2017年10月に購入したマンションを2022年12月に売却したとしましょう。実際の所有期間は5年を超えますが、売却した年である2022年の1月1日時点では5年以下とみなされます。このケースでは短期譲渡所得に分類されるため、2023年1月1日以降に売却しなければ長期譲渡所得の税率が適用されません。
売却した時期により税率が2倍近く変わるため、所有期間が5年前後で売る場合は特に注意しましょう。
実際にマンションを売却した場合に課税される譲渡所得税を計算してみましょう。ここでは、特例控除を利用せずに計算します。
以下の条件でマンションを売却したと仮定します。
譲渡価額(売却額):4,000万円
所有期間(新築で購入):7年
譲渡費用(売却時にかかった費用):120万円
購入価額:3,800万円(土地価格:1,800万円、建物価格2,000万円)
構造:鉄骨鉄筋コンクリート
所有期間は5年を超えているため、長期譲渡所得の税率で税金を計算します。
まず、減価償却費を計算しましょう。鉄骨鉄筋コンクリート造のマンションなので、償却率は「0.015」です。
以下の計算式に当てはめて減価償却費を算出します。
減価償却費=建物購入価額×0.9×償却率×経過年数
減価償却費==2,000万円×0.9×0.015×7年=189万円
減価償却費は189万円となります。
次は取得費の計算です。土地は劣化しないため、建物購入価額からのみ減価償却費を引きます。
減価償却費を差し引くことにより、建物の購入価額を抑えられます。
以下が取得費の計算式です。
取得費=土地購入価額+(建物購入価額-減価償却費)
取得費=1,800万円+(2,000万円-189万円)=3,611万円
取得費は3,611万円となります。
続いて譲渡所得を計算します。譲渡所得の計算式は以下の通りです。
譲渡所得 = 譲渡価額-(取得費+ 譲渡費用)
譲渡所得=4,000万円-(3,611万円+120万円)=269万円
譲渡所得は269万円となります。
いよいよ、譲渡所得税を算出します。所有期間7年のマンションのため、長期譲渡所得の税率を使用します。
計算式は以下の通りです。
所得税=譲渡所得×税率
復興特別所得税=所得税×2.1%
住民税=譲渡所得×5%
譲渡所得税=所得税+住民税+復興特別所得税
所得税=269万円×15%=40万3,500円
復興特別所得税=40万3,500円×2.1%=8,474円
住民税=269万円×5%=13万4,500円
譲渡所得税=40万3,500円+13万4,500円+8,474円=54万6,474円
譲渡所得税は54万6,474円となります。
マイホームなど居住用のマンションを売却した場合は、特例を受けられて税金が安くなる、あるいはかからないケースがあります。
ここでは、マンションを売却したときに利用できる控除についてご紹介します。
マイホームを売却した場合、要件を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例を利用できます。この特例は、所有期間の長短は関係ありません。大幅に譲渡所得を減らせるため、非課税となる場合も多くみられます。
マンションの場合、特別控除を受けられる適用要件は以下の通りです。
3,000万円特別控除の特例を受けるには、上記6つの要件すべてを満たす必要があります。
自宅マンションを売却して一定の要件に該当するときは、長期譲渡所得の税額よりさらに低い税率で譲渡所得税を計算できます。これが、マイホームを売ったときの軽減税率の特例です。売却した年の1月1日に所有期間が10年を超えている場合に利用できます。
自宅マンションを売却した際、特例が適用される要件は以下の通りです。
軽減税率の特例の適用を受けるには、上記6つの要件すべてに該当する必要があります。長く住んでいたマンションを売却する際は、ぜひ利用しましょう。
自宅マンションを売却して新居を買い換えた場合、一定の要件を満たせば譲渡益に対する課税を将来に繰り延べられます。これが特定の居住用財産の買い換えの特例です。
あくまでも将来的に課税が繰り延べられるだけなので、譲渡益が非課税となるわけではありません。
特例の適用を受けるための主な要件は以下の通りです。
買い換えたマイホームを将来売った場合、売却して得た譲渡益に特例の適用を受けて課税が繰り延べられていた譲渡益を加えた金額が、譲渡益として課税されます。