不動産売却のノウハウ
築40年を超えるマンションを売却・検討するときは、築浅の物件とは異なりきちんとした戦略が大切です。そうしないと売却価格が安くなってしまうか、最悪の場合は売却が成立しないおそれがあります。まずは相場や特徴を知りましょう。
不動産お役立ちコラム 不動産売却2024年3月8日
国土交通省の「分譲マンションストック数の推移」によると、2022年末時点での分譲マンション数は約694.3万戸あります。さらに、「築40年以上のマンションストック数の推移」によると、このうち、築40年以上のマンションが約125.7万戸です。
これは1983年前に建築された2022年末時点のマンションであり、マンションストック数は10年後の2032年末には約2.1倍、20年後の2042年末には約3.5倍に増加すると予測されています
つまり、築40年以上のマンションはものすごく古いというイメージを持たれがちですが、数の上では十分に流通性が高いことになります。
特徴としては比較的立地が良いことが多いです。なぜなら、当時のマンション建築時は現在よりも好立地の敷地が多く、デベロッパーによる敷地の取り合いが少なかったからです。これは、生活拠点としてのポイントが高いと評価できます。
実際の流通はどうなっているのでしょうか。
国土交通省の「不動産取引を巡る社会情勢」によると、2018年度の首都圏におけるマンション販売戸数は、新築が約3.7万戸でした。対して中古の成約件数は約3.8万件で、最近は新築より中古マンションのほうが売れていることを示しています。
また、東日本不動産流通機構の「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」によると、首都圏における成約物件のうち、築40年超のマンションが占める割合は全体の16.5%でした。築30年超は31.5%にもなります。
中古マンションの流通量が多い背景としては、高齢の単身者世帯の増加が要因のひとつと考えられます。2015年の高齢単身者世帯は625万世帯あり、全単身世帯の34%を占めています。(参考:国土交通省「不動産取引を巡る社会情勢」)
以上のことから、今後の築古マンションは高齢者単身世帯へのニーズが高まる可能性があるでしょう。
2022年時点の、首都圏の中古マンションの成約価格は以下のとおりです。
(単位:万円 面積:約55㎡~約70㎡)
50万円を超え 100万円以下のもの | 0~5年 | 6~10年 | 11~15年 | 16~20年 | 21~25年 | 26~30年 | 31年 |
成約価格 | 6,193 | 5,543 | 5,250 | 4,290 | 2,832 | 2,193 |
参考:東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」
マンションの法定耐用年数は47年であり償却率は0.022(定額法)です。これを応用して上記表から、築40年の相場を計算してみます。
築30年時点から築40年時点までの償却率=(40-30年)×0.022=0.22
築40年時の成約価格相場=築30年成約価格2,832万円×(1-0.22)≒「2,209万円」
以上の理論が、一応は成り立ちます。
この2,209万円に対し、不動産の個別性の高さを考慮して上下10%調整します。結果、築40年のマンション相場は、個別性に応じて2,000〜2,400万円ということになります。
相場とは言い換えれば平均値です。しかし、不動産価格には個別性が大きく影響します。
たとえば、都心部と地方、間取り、所在階、長期修繕計画やマンション管理体制などです。
物件特性に応じた購入希望者のターゲットにより、相場と実際の売却価格が乖離することも十分にあり得ます。
一番のニーズは低価格で購入できることです。特に新築マンションは価格が高騰し続けているため、より中古マンションの低価格へのニーズは高まります。
また、世の中の動向は新規取得から再利用へと意識が変わってきており、リノベーションを好む消費者も増えています。リノベーションには多額の費用がかかりますので、低価格なマンションは魅力的です。
また、築40年のマンションは好立地であることが多いため、利便性を重視する人にとっては貴重な物件です。
築40年のマンションを売却するには戦略が大切です。何が問題点であるかを気づいたうえで、対策をしましょう。
外観や共用部はどうしても古くなりデザインも最新ではありません。購入希望者の第一印象に影響が出ます。
外観の古さを即座に解決することは不可能ですので、別のアピールをします。
不動産を購入するということは、物件だけでなく場所も購入していることを意味します。そのため、周辺環境を武器にアピールしましょう。具体的には、購入希望者が内見に来た際の情報提供と募集広告の内容です。
外観同様に専有個室内も古くなっています。これは、室内設備も含めて外観以上に気になるものです
なぜなら、近年はリノベーションニーズがあるからです。相手の好みを無視して水まわりやクロスのリフォームをしても費用がかかり、売却価格が高くなってしまいます。その分を値引きしたほうが、取引は成立しやすくなります。
その代わり、汚れが目立つ場合はハウスクリーニングをしましょう。また、内見前に整理整頓しておくだけでも印象は変わります。
地震などの自然災害が多い昨今、築40年のマンションでは安全性に不安を持たれてしまうおそれがあります。
物件のどこに問題点があり、どのような修繕をすればよいのかがわかると、買い手が安心しやすくなります。
そのため、ホームインスペクション(住宅診断)の実施が募集広告で記載されていると人気が上がり、価格にも好影響を与えます。
また、長期修繕計画の内容を確認しましょう。良い情報はアピール材料になります。
金融機関はローン審査の際に物件の担保価値を計ります。そのため、築年数が古いと審査が厳しくなることがあります。
マンションが新耐震基準に適合しているか確認します。これはローン審査において重要事項です。
新耐震基準に適合している場合は募集広告にも必ず記載しましょう。価格にも影響します。
また、中古物件のローン融資に長けている金融機関を、仲介している不動産会社に依頼して探しておき、購入希望者に情報提供します。
築年数が古いと売却までに時間がかかることもあります。そうなると、時間とともにもっと古い物件になってしまい事態が悪化しかねません。
不動産会社に仲介を依頼する契約形態には3種類あります。一般媒介・専任媒介・専属専任媒介です。この中で一般媒介は複数の不動産会社に依頼できるため、あまり熱心に営業してもらえないおそれがあります。
専任媒介または専属専任媒介を検討しましょう。この契約は不動産会社間で情報が見られるシステム(レインズ)への広告掲載と、一定期間ごとに売主への状況報告が義務化されているので安心感もあります。
築年数が古いと査定価格は低くなりますが、これが適正価格かどうかは一般消費者にはわかりづらいものです。少しでも高く売るにはどうするべきでしょうか。
不動産会社にはそれぞれ特徴があります。賃貸に強い・一戸建て売買に強い・中古マンション売買に強いなどです。築年数が古いマンションの売買に強い不動産会社を選びましょう。
築年数が古いマンションの売買に強い不動産会社は、広告宣伝方法や買い手ターゲットの絞り方のアドバイスも豊富です。
さらに、リノベーションもワンストップでできる不動産会社だと購入希望者に喜ばれます。
また、不動産会社は取引に積極的な時期があります。お腹が空いている時期などと表現されますが、たとえば決算間近で十分に利益が上がっているときは、税金対策もありお腹が空いていない時期といえるでしょう。
いろいろと対策を打ってせっかく高値で売れても、売却には大きな落とし穴があります。税金です。
事前準備をきちんとしないと、売却価格には多くの税金がかかる場合があります。多くの税金がかかれば、大幅な値引きをして売却したのと同じになってしまいます。
不動産を売却したときは譲渡益課税がされます。しかし、すべての売却に対してではありません。
簡単にいうと「売却価格-(購入価格+購入時諸経費+売却時諸経費)=プラス」となった場合です。つまり、譲渡益課税がかかるかどうかの確認には、購入時の各種費用を証明する書類などが必要です。これが無いと、売却価格から売却価格×5%しか差し引けず、証明書がある場合より多くの税金がかかってしまいます。
そのため、購入時の費用が証明できる書類などを探して準備しておきましょう。