不動産売却のノウハウ
所有している分譲マンションの部屋の売却を検討したくても、どうしていけばいいのかわからないという方は少なくありません。
分譲マンションの売却の流れを、初心者でも分かるように解説します。合わせて売却失敗を防ぐ方法も述べていきます。
高く売るために何をすればいいのか理解したうえで行動し、スムーズにマンション売却を進めていきましょう。
不動産売却 基礎知識2024年7月12日
それでは、マンションを売却する手続きについて具体的にお話ししましょう。売却の手続きは次のような流れです。
順番に解説していきます。
まずは不動産会社で相談をするところからです。「マンションを売却して新築を購入したい」など、悩みや要望を伝えてください。
適正な売り出し価格を決めるためにも、不動産会社に査定の依頼をしましょう。
不動産会社に依頼できる査定には「簡易査定(机上査定)」と「訪問査定」の2種類があります。
「簡易査定」は過去に取引された周辺の情報や売買データをもとに査定価格を割り出す方法です。査定依頼者から提供された物件の情報や、住宅地図のような外部から手に入れられる情報のみで査定します。匿名で依頼できる点や、査定結果がすぐに分かる点がメリットです。
「訪問査定」は、担当者が現地に出向き物件や周辺環境を調査して価格を算出します。現地でしかわからない情報なども加味されるため、より正確な実勢価格を把握できます。実勢価格とは、不動産が実際に市場で売買された価格のことです。
媒介契約とは、土地や建物などの不動産を売却するときに、買主を探してもらうために不動産会社と結ぶ契約のことです。
媒介契約には「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」の3つの契約形態があります。
これらについてメリット・デメリットを含めてご紹介しましょう。
複数の不動産会社に依頼できます。所有者にとって一番自由度の高い契約形態です。
買主を所有者自身が見つけることも可能で、その場合は仲介手数料を支払わずに売買できます。
複数の不動産会社に買主探しをしてもらうことも可能です。不動産会社を通じてより多くの購入希望者に物件をアピールできるのがメリットです。
ただし、募集の自由度が高い分、不動産会社との取り決めもゆるく、不動産会社側からの状況報告の義務がないため、所有物件への反応をタイムリーに把握することが難しくなります。
また、人気物件でない場合、自社で買主を見つけられなかった時に広告費や手間代を回収することができなくなるリスクから、積極的な買主探しに取り組んでくれないというデメリットもあります。
一般媒介契約は、所有しているマンションが好立地もしくは築浅である場合や、ある程度の自由度をもって買主を探したい方に向いている契約といえるでしょう。
専任媒介契約では、一般媒介と同様に自分で買主を探せるものの、契約を結べる不動産会社は1社に限定されるところが大きな違いです。
契約を締結した不動産会社は、契約締結後から7日以内に指定流通機構であるレインズ(不動産事業者同士の物件情報共有サイト)に物件登録すること、2週間に1回は売主に状況報告をすることが義務づけられています。
専任媒介契約では、自身が選んだ信頼できる1社とだけの契約です。不動産会社側からみれば、買主が決まればすぐに自社の利益につながる物件という位置づけになるため、積極的な広告活動、販売活動をしてくれます。
早い段階で買主が決まり、スムーズな売却につながりやすいのが専任媒介契約といえます。不動産会社とのやり取りも1社のみとなり、定期的に状況報告をもらえるため、状況が把握しやすく、コミュニケーションよく売却活動ができるのがメリットです。
デメリットは、不動産会社を一本化するため全てをその会社に委ねられてしまうこと。
売買に積極的な会社なら、スピード感のある売却活動につながりますが、そうでなかった場合、期待するパフォーマンスを発揮してくれないかもしれません。
専任媒介契約は自身でも買主を探す活動ができる方、できるだけ早く所有物件を売却したい方に向いている契約です。「信頼できる1社選び」が非常に重要なポイントになるので、間違いのない会社を選ぶようにしましょう。
専属専任媒介契約は、専任媒介契約と同様、契約を結べるのは1社だけです。
他の契約形態との違いは、自身で買主を探すことができない点にあります。
不動産会社は契約を締結した日から5日以内にレインズに登録することと、1週間に1回以上販売状況を報告することが義務づけられています。
専属専任媒介契約は決めた不動産会社1社との関係性が密になり、制約がある一方で不動産会社の手厚いサポートを受けることができるのがメリットです。
結果として不動産会社が最も力を入れて販売に向かってくれるのがこの契約形態になるため、所有物件を比較的早く売却できるメリットがあります。
一方、取引できる不動産会社が1社となり、かつ自身で買主を探すこともできないので、専任媒介契約以上に不動産会社選びを慎重に行う必要があります。
専属専任媒介契約は、自身が多忙で買主を探すことができない方や、そもそも物件を購入してくれそうな相手を見つけるすべがない方、それでもできるだけ早くマンション売却を成立させたいと考えている方におすすめしたい契約形態といえます。
契約の形態を決め、不動産会社と媒介契約を結べばマンションの売却活動を始めることができます。
原則、売却活動は不動産会社が行うものですが、売主側もさまざまな点で販売活動に協力する必要があります。たとえば、実際の部屋を見て確認する内覧の資料を用意したり、物件の撮影を行うなどです。
この対応を不動産会社とコミュニケーションよく進めれば、より早い売却を実現できる可能性が高まるので、手間を惜しまず前向きに関わっていきましょう。
売却活動を行う前に、マンションの売り出し価格を決めます。売り出し価格は査定額や自身の希望条件をもとに不動産会社と検討し、「これなら買ってもいいかも」と買主も納得できる価格に設定することが大切です。
売り出し価格を決めると、チラシやDM、店頭掲示やホームページ掲載などでマンションの販売が開始されます。
物件の購入希望者からは内覧を希望されるのが一般的ですが、その際に渋ると「見せられない何かがある訳アリ物件か」と疑われてしまいます。
問題のない物件であることをアピールする意味でも、迅速な対応が必要です。
当然ですが内覧前には部屋の清掃は必須です。大切にしてきた部屋であることをここでアピールしてください。
購入者が気にする部分はたいてい水回りなので、キッチンやお手洗い、洗面、お風呂は、すみずみまで丁寧に清掃しましょう。
前所有者の生活感が出すぎると購入意欲が下がるため、家具などのない空室状態で内覧できるのがベターです。
雰囲気に合った家具が置かれていると、部屋の好感度がアップすることもありますが、基本的には不要な荷物、部屋のイメージダウンにつながりそうなものは処分しましょう。
内覧で購入希望者の購買意欲が高まったら、一般的には条件交渉を行います。
条件交渉では、メインとなる価格交渉に加えて、引き渡しの時期や引き渡す設備に関する条件も交渉材料になります。
いよいよ買主との売買契約を締結します。契約前には必ず「物件個別要因の再調査」と「契約条件の確認」を行うようにしましょう。
「物件個別要因の再調査」とは取引の安全を期すために追加の物件調査を実施することで、雨漏り・シロアリの害などの現地調査や、直近の登記簿記載事項など法務局調査を行います。
売買契約書は不動産会社が作成するので、できあがった時点で契約書と重要事項説明書に目を通してください。紛争になった場合、最も重要性の高い2つの書面です。
「不動産の知識がない」「忙しい」などを理由に書類に目を通さず、マンション売却に失敗するケースは多いです。不動産会社にもミスや間違いはあると意識し、全文確認しましょう。
特に物件調査内容については、記入漏れや調査不足が起こりがちなので注意してください。
契約は原則、売主と買主、不動産会社の担当者が集まって行います。
売主、買主の住んでいる場所が遠方であったり、三者のスケジュールが合わせにくいなどの理由から「持ち回り」というやり方をすることもあります。
持ち回りとはその名の通りで、不動産会社が書類を「持って」売主、買主のそれぞれのところに「回って」行き、書類説明や金銭授受の手続きをすすめるやり方です。
契約時には、宅地建物取引士とよばれる国家資格者が重要事項を説明することが義務づけられています。
宅建士から重要事項の説明を受け、契約書に署名・捺印することで正式に売買契約が完了します。
契約が成立したら、手付金とよばれる一時金を買主が売主に支払います。
手付金はマンション引渡し時の決済のタイミングで、売買金額の一部として充当されます。
また、違約金としての意味もあるため、買主都合で契約が解除された場合には、手付流しといって、手付金を違約金として売主にそのまま支払わなければなりません。
一方、売主都合で契約解除となる場合には、手付倍返しという、手付金をお返しするだけでなく、同じ額を上乗せし、手付金を倍にして買主に支払う必要があります。
売買契約を結んだら、決済してマンションを引き渡します。決済とは、残代金を買い主に支払ってもらい、不動産の権利を渡すことです。
決済と引き渡しは、売買契約を結んでから約1カ月程度の期限をもって行われることが一般的です。
決済では、売主・買主・不動産会社・金融機関の担当者が一同に介して行われます。
決済の段階で残債がある場合、融資先金融機関との間で同時に残債の一括返済を行います。
また、同じタイミングで売却時に必要な「抵当権抹消登記」と「所有権移転登記」を進めることになります。
登記手続きは通常、不動産会社か金融機関がお付き合いしている司法書士に依頼して進められます。
決済のタイミングで登記内容を変更する必要があるため、決済の場に司法書士の先生も同席し、決済が行われたのを確認でき次第すぐに法務局に手続きに向かってくれることもあります。
決済後マンションの鍵や書類を買主にお渡しし、マンションの引渡しが完了します。
マンション売却で利益が出た場合や税金控除を受けたい場合は、翌年に確定申告を行う必要があります。投資用で無かったとしても、売却益があれば利益分に対する税金が発生します。
売却時にかかる税金として譲渡所得税があり、計算式は次の通りです。
マンションの譲渡所得=売却価格-(取得費+売却にかかった費用-減価償却費)
計算結果がプラスになっていたら所得税と復興特別所得税、住民税の課税対象です。
2024年はマンションを売却するには非常に良いタイミングにあるといえます。
新築マンション市場・中古マンション市場ともに市場動向は右肩上がりで好調に次ぐ好調といった状況だからです。
売却のご不安がある方に、マンション市場についての客観的事実の情報をご紹介します。
「国土交通省」による不動産価格指数を見ると、2023年11月分での不動産価格指数は住宅地114.5、戸建住宅113.6に対し、マンションは193.4となっています。前月比でいえば0.3%減となっているものの、2011年以降は上昇し続けている状態です。住宅地や戸建住宅の上昇幅とは比較にならないほど価格が上昇しています。
マンションを売却した際、譲渡所得が以下の条件を満たした場合は確定申告が必要です。
レインズのマーケットデータより2024年2月度の不動産市場の動向を見ると、中古マンション市場も好調で、首都圏での成約件数は前年比で3.4%増加しており、これが9カ月連続で前年同月を上回っている状況と伝えられています。
マンションを売却した際、譲渡所得が以下の条件を満たした場合は確定申告が必要です。
全国の9割以上の不動産会社が加入しているといわれるレインズは、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営するコンピューターネットワークシステムのこと。
適正かつスムーズな不動産取引を実現させる目的で構築されており、不動産会社が媒介契約した物件情報をレインズに登録することで、全国からその情報を閲覧できます。
レインズが発行するマーケットデータであれば、信頼性の高いものであることは理解いただけるのではないでしょうか。
2024年はマンションを売却するには非常に良いタイミングだということを理解いただけたところで、マンションをより高い価格で売却するコツや注意点についてお伝えします。
所有しているマンションが市場でどのような扱いになるのかを把握し、購入希望者が見込める売り出し価格で売却活動をすることが重要です。
そのためにも、まずはしっかりとした市場調査を行いましょう。
マンションの構造や築年数、住環境などが似ている物件が売りに出ていないかをネットなどを活用して調べてみましょう。
不動産会社に電話やメールで問い合わせをして、相場を確認してみてもいいかもしれません。
もちろん、具体的な査定を依頼していくことも可能です。
どんなに素晴らしいマンションでも、購入希望者が見つからなければ売れることはありません。
市場感覚を養う意味でも市場調査を実施しましょう。
マンションの売却はタイミングがとても重要です。
たとえば、転勤やお子さんの進学などの環境変化による移動が増える2月から3月末くらいまでの期間や、近くに大型店舗や企業誘致、駅や道路整備が進んで利便性が上がったタイミングでは、マンション売却が進みやすくなる傾向にあります。
このタイミングは絶対に逃してはなりません。
特に利便性の向上はこれまでよりもマンションが高く売れるチャンスが到来したタイミングです。
ここで所有のマンションを存分にアピールできるよう、準備を進めていきましょう。
マンションの売却は、スタートしてから平均で半年程度かかるといわれています。ベストタイミングで市場に売り出しができるよう、引渡し希望の少なくとも3カ月前には売却活動を開始するつもりで準備してください。
時間的余裕がないと、売れるか不安になったり焦りが出たりした結果、安易に値下げ交渉に応じてしまい、結果思うような価格で売却できなくなるケースもあります。
なお、マンション売却は築20年以内のものというのが通説になっています。
設備の老朽化や、金融機関からの融資取り付け可能期間から、20年という数字が目安になっていると考えられます。
築20年を過ぎる前に不動産会社に売却の意思を伝え、販売活動を始めていきましょう。
マンション売却には良いタイミングというわりには売れないという場合、いくつかの理由が考えられます。
マンションが売れない理由としては次のようなものがあります。
これらについて解説するとともに対策についてもお伝えしていきます。
マンションが都心部から離れていて人口もそれほど多くないエリアにある場合や、駅・学校・買い物施設などの利便施設が近くに充実していない場合、立地を重んじる購入希望者からは対象外とみなされてしまいます。
このようなケースでは、そのエリアに精通した不動産会社を探し、エリアの魅力や他のマンションと比較しての相対的価値をアピールしてもらうなど、地元密着型の不動産会社とのお付き合いでマンション売却を実現していくのがいいでしょう。
築年数が20年を超えている中古マンションは、やはりどうしても売れにくくなってしまいます。
これは建物自体の劣化が目立ち、修繕やリノベーションではその劣化が解消できなくなるのが理由として考えられます。
中古マンションの成約率は築20年程度までなら30%前後を維持できるのですが、築20年を超えたあたりから20%を下回り始め、築30年を超えると約10%程度にまで落ち込んでしまうのです。
対策としては、建物に問題がないことをアピールするためにも、インスペクションとよばれるマンションの住宅診断を実施することや、瑕疵(かし)担保保険に加入し、仮に売却後に不具合が発覚したとしても補償を受けられるようにしておくことがあげられます。
買い手の不安を払拭できる安心材料を揃えておくことで売却につながりやすくなります。
通常、売り出し価格は不動産会社から提示された査定額を根拠に、不動産会社と売主が相談して決めます。
このとき売主になんらかの事情があり、希望価格とその理由がはっきりしていると、市場での適正価格とかけ離れた売り出し価格であったとしても、マンションの売却活動が始まってしまいます。
一方で購入希望者は通常、少しでも好物件をよりお得に手に入れたいと考えています。
結果、相場より高値で設定されたマンションは対象外扱いとされてしまうおそれがあります。
対策として、できるだけ適正価格に見合った価格で売却活動を行うことだといえば簡単ですが、安易な値下げは逆に訳あり物件なのかと敬遠されるおそれもあります。
マンション売却の検討を始める段階で複数の不動産会社に相談し、売主の気持ちに寄り添いつつ、市場に関しての知識や市場動向をつかんでいると感じられる不動産会社とタッグを組んで売却活動に向き合うことが肝心です。