不動産売却のノウハウ
離婚をする場合、夫婦で所有している資産は財産分与によって分けられることが一般的です。このときに悩むのが「住んでいるマンションをどうすればいいのか」という問題です。
夫婦の共有財産として財産分与の対象となるマンションですが、資産価値が高いこともあって、離婚時の悩みの種になるケースが多いようです。
離婚した場合、所有するマンションにはどのような選択肢があるのか。離婚時のマンション売却を成功させるポイントについて紹介します。
不動産お役立ちコラム 不動産売却2024年7月12日
離婚するときのマンションの選択肢は大きく分けて3つあります。
それぞれの選択肢について順に解説していきます。
夫婦もしくはどちらかがマンションで生活し続けるという選択肢です。
マンションは物理的に分けることができないため、売却した大金を分与することが一般的ですが、たとえば子どもの生活環境を考慮して、そのまま住み続けることを選ばれるパターンもあります。
夫婦のどちらかが慰謝料を払おうにも現金がないため支払えないケースや引っ越し費用を捻出できないなどの事情から住み続けることもあります。
住宅ローンが残っているマンションにおいては、慰謝料の代わりとしてローンを返済しつつ、住み続けるといったケースもあります。
また、マンションが共有名義になっている場合には、単独名義にするための住宅ローン残債の借り換えや一括返済ができなければ、住み続けるしかないという判断もあるでしょう。
この選択肢を選んだ場合、以下のようなリスクが想定されます。
住み続けているので、当然ながらマンションを処分することでの財産分与はできません。マンションの資産価値をはかったうえで、それに相当すると思われる資産を他の資産で分けてもらうなどの方法はあります。
あらかじめマンションにかかる費用の負担を明確化しておくことや、将来的な売却活動のルールと期限を決め、守られなかった場合のペナルティや解決方法についても明確化しておくことなどが、対処法として挙げられます。
これらの内容を確実に履行してもらうためにも、公正証書などの法的効力を持つ文書を作成しておくことも重要です。
所有するマンションが好物件のため賃貸でも借り手が見つかりそうな場合や、売ろうとしても売れないが住宅ローンの返済を考慮しなければならない場合などは、賃貸物件として貸し出すことも一つの選択肢です。
借り手が見つかれば、たとえ共有名義から単独名義にするための住宅ローンの借り換えや、一括返済ができなかったとしても、経済的負担をなくせるでしょう。
ただし、家賃収入が誰の手に入り、またマンションにかかる費用が誰から支払われるのかといったルールや、収支計算・管理などを、離婚を前提とした夫婦が協議を経て取り決めるといったことは難しいかもしれません。
賃貸収入がマンションの諸経費を越えてきたときに、その収益は誰のものになるのかという問題が発生するでしょう。
また、そもそもマンションの立地やスペックが賃貸に適しているかが重要であることから、離婚時に夫婦で所有していたマンションを貸し出すということは、かなり稀なケースであるといえます。
トラブルなく資産をきれいに清算するには現金で分割するのが一番です。そこで、離婚時にはマンションを売却されるケースが多いです。
二人ともマンションに継続して住む理由がなく、離婚による経済的負担も少ない場合や、優良物件で買い手がすぐ見つかると予測できる場合などはスムーズに売却することができます。
マンションを売却するケースでは、共有名義から単独名義にするための住宅ローンの借り換えや、一括返済ともにできない状態だとしても、売却代金によって残債を返済できるのであれば問題ありません。
想定されるリスクとしては、所有マンションが好物件でなかった場合に売却に時間がかかり、なかなか現金化できず、財産分与に時間がかかる点があげられます。
対処法としては、ローン残債やマンションの経費などを考慮に入れ、適正価格で市場に出して早期に購入者を見つけられる内容に変えたり、不動産会社との契約形態や内容を見直して、積極的な売却活動をしてくれるように変えていくなどの方法があります。
離婚を理由としたマンション売却を成功させるために、どのような点に注意したらいいのでしょうか。
これらについて順に解説していきます。
離婚時においても、夫婦が所有しているマンションはできるだけ高く売れた方がよいでしょう。後述するように、離婚時のマンション売却においては、住宅ローンの残債が残っているのか、残っている場合は売却代金によって残債を完済できるのかが、その後の資金計画などに大きな影響を与えます。
できるだけ高い価格でマンションを売却するには、次のようなポイントがあります。
売却するマンションが新築同然の築浅マンションである場合、比較的高値で売却できる可能性があります。離婚を理由に手放したマンションとなると、特に新婚の夫婦からは敬遠される可能性があります。
これも築浅マンションであれば、住宅設備や全体的なスペックが充実しているため、購入する価値ありと判断してもらえます。
売却するマンションが駅から近い、商業施設や学校から近くて利便性が高いなど好立地な場合、比較的高値での売却が期待できます。好立地物件は、多少古くても高値で売却できます。
離婚は当事者の心身共に疲労が大きく、離婚理由にもよりますが、一日でも早く住まいだったマンションを手放して、物理的に距離を置きたいと考えるケースは少なくありません。
しかし、売却を急いで進めてしまうと、買主に足元を見られて大きな値引きや条件交渉をされてしまうかもしれません。
マンション売却においてはできるだけ冷静に、また時間的な余裕を持ちながら、売り急がないことをおすすめします。
マンションを売却した際、売却益が出た場合には譲渡所得税が課税されます。
ただし、マンションを始めとした居住用資産を売却した場合には「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を受けることができます。
「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」とは、譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができるという特例です。
マンションを売却して、3,000万円以上の利益を生み出すのは考えにくいです。譲渡所得税は売却益があってはじめてかかる税金です。
その他にも、マンション売却時には、売買契約書に必要な印紙税や登記に関する登録免許税なども発生します。詳しくは不動産会社に相談してみましょう。
離婚時のマンション売却で問題になりやすいのは、マンションが夫婦の共有名義になっているケースです。
まず、離婚時に夫婦間でマンションの所有権譲渡が行われると、所有権を手放した側に譲渡所得税がかかります。
マンションを譲渡した上に税金までかかってくるので、どちらが所有するか、また所有するとしたらどのような条件にするのかでトラブルになるケースがあります。
離婚するうえでは、マンション売却を進めたほうがトラブルが少ないことが分かりました。
それでは具体的に、離婚でのマンション売却の方法について解説していきます。
住宅ローンが残っている場合と残っていない場合、また任意売却についても併せてご説明します。
マンションを売却することで住宅ローンの完済が見込めるのであれば、通常のマンション売却手続きに進めば問題ありません。
この状態を「アンダーローン」といいます。
アンダーローンの場合は、マンションを売却して住宅ローンの完済をした後、売却手続きにかかった諸費用を差し引いた金額がマンションの売却益です。
この売却益が財産分与対象の資産となるので、離婚するうえでの財産分与のルールにのっとってご夫婦で分けていくこととなります。
一方、マンションが住宅ローンを完済するだけの金額で売れず、ローンの一部が残ってしまうことを「オーバーローン」といいます。
オーバーローンになった場合は、売却額で支払った残債の残りを預貯金や有価証券などの資産から補填しなくてはなりません。
しかし、離婚を前にしている状態では残債を補填できるほどの資産がないということも十分起こり得ます。ローンが完済できなければマンション売却ができません。このような場合には、任意売却という方法でマンションを売ることになります。
オーバーローンであってもマンションを売却したいときに選択する方法が任意売却です。
任意売却は住宅ローン完済不可という状態のため、債権者である金融機関の合意が得られなければ選択できません。
任意売却の検討については、離婚前に進めておくほうがいいでしょう。離婚後は別々の人生を歩みます。相手との連絡がつかなくなり売却の手続きが進まない、離婚後の新生活が圧迫される、どちらか一方に金銭的負担が起きるなど、トラブルの原因になるおそれがあります。
住宅ローンが残っていなければ金融機関との手続きは発生しません。通常のマンション売却手続きに進みましょう。
売却活動を不動産会社に依頼するのであれば、打合せしながら進めていく必要があります。
売却できれば、諸経費を差し引いた残金が夫婦の財産となりますので、離婚するうえでの財産分与対象です。