不動産売却のノウハウ

タイトル画像

長期金利の動向が住宅ローンに与える影響と選び方のポイント

住宅ローンは、マイカーローンやフリーローンといった他のローン商品と比べると金利が低めに設定されています。しかし、高額な借り入れになるため、金利が少し変わっただけで、毎月の返済額に大きな影響を与えてしまいます。

住宅ローンの金利が変わる要因はさまざまですが、その一つが長期金利です。長期金利は、景気や金融政策などの経済状況によって変わり、連動して住宅ローンの金利にも影響を与えることがあります。

住宅ローンを組む際は、長期金利の動向を注視しつつ、金利変動リスクを抑えられる借入方法を選ぶことが大切です。

長期金利の動向が住宅ローン金利に与える影響と、住宅ローンの選び方のポイントについて詳しく解説します。

不動産売却 費用・税金

2024年7月12日

目次

長期金利とは?

長期金利は、償還期間が1年以上の金融資産に適用される金利です。景気によって変動するため、景気予測の重要な指標となっています。

新聞やテレビで報道される長期金利の指標は、一般的に国債の10年債の利回りです。長期金利の動向は、住宅ローンの固定金利に影響するため、住宅ローンを組みたいと考えている方は、長期金利の動向を注視しておくとよいでしょう。

短期金利との違い

短期金利とは、償還期間が1年未満の金融資産に対する金利を指します。指標となっているのが、金融機関同士が担保なしで翌日返済することを条件に資金を貸し借りする、「無担保コール翌日物」です。

長期金利と異なり、日本では伝統的に中央銀行である日本銀行が金融政策として、操作・誘導するため、政策金利とも呼ばれます。

短期金利は、市場に流通するお金の量や需要で変動します。たとえば、多くの人がお金を必要とする場合、資金需要が高まり金利は上昇します。

なお、金利が上昇し過ぎていると日本銀行が判断すれば、市場にお金を供給することで金利上昇を抑え込みます。

景気の良し悪しで変動する傾向がある

長期金利は経済情勢や景気の影響を受けます。景気と長期金利の関係は、直感的にわかりやすいと思います。景気がよくなると、個人消費や企業の設備投資が増加し、円の資金需要が高まります。この流れで長期金利が上昇します。

逆に景気が悪くなると、個人の財布の紐は締まり、企業の設備投資も抑制されることで資金需要が減り、長期金利が下がります。一般的に、景気と金利には循環サイクルがあるといわれ、以下のような関係になります。

景気回復期:金利が上昇
景気好況期:金利上昇から高止まり
景気後退期(前期):金利が下落
景気後退期(後期):金利が下落から下げ止まり

昨今のように為替相場が円安に進んだ場合、外貨の買いと円の売りが強まります。このようなトレンドの場合、円からドルなどの外貨に資金が流れていることであり、円の資金需要に対して供給が減るため、金利は上昇傾向です。なお、円安は物価上昇も伴うため、さらに金利上昇につながります。

また、日本でも物価高が続いていますが、物価が上昇すると資金需要が高まり、金利は上昇することになります。海外のように物価上昇が継続すると、中央銀行がインフレ対策を行います。物価の上昇の過熱感を抑制させるため、金利を引き上げて、お金の供給を減らす政策金利がとられます。

長期金利の動向が住宅ローン金利に与える影響

新築や中古の戸建てやマンションの購入で住宅ローンを借りる場合、金融機関によって変動金利型、固定金利選択額(一定期間を固定金利とする方式)、全期間固定金利型など、取り扱うローン商品が異なります。

固定金利は、長期金利などをもとに決定されます。過去8年間の住宅ローン金利の推移は表1の通りです。

表1は、株式会社ダイヤモンドとホームロンドクター株式会社が提供するDH住宅ローン指数というもので、主要15の金融機関の実質金利(諸費用込)の住宅ローン金利の指標となっています。(表1は各年1月の指標を記載)。変動金利は、緩やかに下落が続いてきましたが、固定金利(長期金利)は、2022年頃から緩やかに上昇しています。理由としては、長期金利(10年国債利回り)が上昇したためです。

しかし、その上昇は大幅なものにはなっていません。

表1:DH住宅ローン指数(2017~2024年の各年1月の住宅ローン指数)

2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年
変動金利 0.698% 0.664% 0.679% 0.603% 0.598% 0.580% 0.543% 0.448%
10年固定金利 0.982% 0.997% 0.971% 0.974% 0.930% 0.956% 1.214% 1.118%

長期金利は10年債の利回りに連動して変動するわけですが、日本は日本銀行が実質的に長期金利も操作しています。2016年に導入されたイールドカーブ・コントロールといわれる政策で、日本銀行が10年国債を購入することで、長期金利の変動をゼロ%程度に推移するようにコントロールしてきました。その後、日本銀行は徐々に長期金利の変動幅の許容範囲を広げてきており、今年3月にはイールドカーブ・コントロールを撤廃しました。

この政策変更により、長期金利は1%を上限のめどとしていましたが、今後は金利は市場に委ねられることになります。一方、10年国債は月額6兆円程度の買い入れは継続し、長期金利が急騰するような場合には、指値オペなどを用いて金利を抑える枠組みは残っています。

長期金利が上がると固定金利も上がりやすい

日本銀行のイールドカーブ・コントロールおよびマイナス金利の撤廃は、長期金利および短期金利ともに上昇が予想されております。日本銀行は急激な金利上昇を避けるため、必要な金融政策は継続すると公表していますが、世界的に金利は上昇しており、相対的に日本の金利はまだまだ低水準です。

この金利差によって、円安が進行しており、円安はインフレおよび長期金利上昇につながる可能性があります。上記で解説した通り、長期金利が上がれば、住宅ローンの固定金利は上昇することになります。

また、長期金利が上昇すると金融機関が住宅ローンの営業方針を変更する可能性があります。マイナス金利が続いた中で、有力な資産運用方法がないため、結果として住宅ローンの獲得に力をいれていた金融機関が多くありました。

長期金利が上昇すれば、金利の低い住宅ローンより国債に投資した方が効率がよいと判断する金融機関もいるでしょう。競争が減れば住宅ローンの金利は上昇する可能性があります。

短期金利は変動金利に影響を与える

住宅ローンを検討している方の70%程度が変動金利を選択していますが、変動金利は短期金利の影響を受けます。今後の短期金利の方向性は、政府や日本銀行の政策を注視する必要があります。

短期金利は、日本銀行の政策金利である無担保コール翌日物(金融機関同士が無担保で、1日満期でお金を貸し借りする取引)のレートに、各金融機関の必要コストや利益を乗せたものが変動金利の店頭金利となります。

この店頭金利から、金利融合などの割引を行い適用金利として住宅ローンの変動金利に適用されています。

住宅ローンの選び方と留意点

写真

住宅ローンには、大きく以下のタイプがあります。

①変動金利

返済期間中の金利がすべて変動する商品で、金利が最も低いことがメリットです。一方、短期金利が上昇すれば、返済額が増えるリスクがあります。

②全期間固定

返済期間の金利をすべて固定化する商品です。支払金利が変動することがないため、返済プランがたてやすくメリットがあります。金利上昇リスクはありませんが、金利水準が高い時期に契約すると、金利負担が高くなるデメリットがあります。

③固定期間選択

当初5年間を固定金利とするなど、借入開始時に固定金利を選択し、その後は固定か変動金利を選択します。全期間固定よりも低い金利が適用されるメリットがあります。

④変動と固定のミックス

変動金利で半分、固定金利で半分など異なる住宅ローンを複数契約する方法です。変動金利と固定金利のそれぞれのメリットを得られますが、その効果は半減します。また住宅ローンを複数締結するため、諸費用が高くなる場合があります。

どのような住宅ローンを選択すべきか

住宅ローンは借入から10年間の返済額を重視して、商品を選択するとよいでしょう。借入から10年間は借入に対する利息返済の比率が高いからです。当初10年で借入元本を減らせることに着目することで、将来の利息負担が減らせるため、結果的に金利上昇や経済状況の変化にも対応しやすくなります。

また、借入から10年後の住宅ローン残高で、その後のライフプランにも大きく影響します。金融機関に相談する場合、変動金利型や期間固定型など一つの商品にこだわらず、複数の商品を比較し、毎月の返済額だけでなく、利息に着目するとよいでしょう。一定の金利変動を予測しながら、返済額のシミュレーションを入念に行い、当初10年の利息額を確認してみてください。

長期金利と住宅ローンの今後の見通し

日本銀行の政策変更後、大手メガバンクの普通預金の金利は約20倍となる0.02%になり、定期金利も軒並み引きあがられました。

そのため、固定金利の住宅ローンも大幅に上昇するのではないかと不安になった方が多いかもしれません。しかし、市場では日本銀行の政策変更は織り込まれていたため、10年国債利回りはさほど大きな上昇になっていません。

表2:2024年のDH住宅ローン指数(2024年1月~4月)

2024年1月 2024年2月 2024年3月 2024年4月
変動金利 0.448% 0.448% 0.448% 0.482%
10年固定金利 1.118% 1.118% 1.209% 1.208%

今後の長期金利の見通しとしては、日本銀行の金融政策や円安への対応などさまざまな要素が関係するため、予測は難しい状況ですが、多くの専門家や金融系アナリストは緩やかな金利上昇を見込んでいます。そのため、住宅ローンの固定金利についても金利上昇するリスクがあります。

金利変動リスクへの備え方

金利上昇リスクを負いたくない場合は、以下のような方法があります。

  • 固定金利を選択する
  • 自己資金を貯める
  • 繰り上げ返済で利息を減らす
  • 貯蓄する
  • 不動産を売却する

金利の変動リスクを負いたくない場合、固定金利の商品を選択するとよいでしょう。

変動金利に比べて金利は高いですが、将来の変動リスクはなくなります。また、借入金額を減らすことで金利変動リスクをヘッジできます。できるだけ自己資金を投入して、借入額を減らせれば、金利上昇による負担は減少できます。

借入初期は利息負担が多いため、積極的に繰り上げ返済を実施する方法も利息を減少させる方法として有効です。

金利上昇に備えて、貯蓄する方法もあります。地道な方法ですが、返済額が増加する事態に備えて、生活費とは別に貯蓄ができれば、いざというときに焦らずにすむでしょう。

しかし、いくら備えをしていても将来のことを完璧に予測することはできません。万が一、住宅ローンの金利上昇によって返済が困難になった場合は、不動産の売却も選択肢の一つとして検討する必要があります。

住宅ローンが残っている家は、住宅ローンの残債が家の評価額を上回る、いわゆるオーバーローンの状態だと基本的に売却ができません。住宅ローンの残債が多い場合は少しでも高く売ることが大切です。

不動産の売却価格は、依頼する不動産会社によって異なります。高く売るなら、実績と経験豊富な不動産会社に相談しましょう。

小田急不動産にご相談ください

不動産の売却査定価格を
無料でご提案いたします

  1. 郵便番号

    任意
  2. または

  3. 都道府県

    必須
  4. 市区町村

    必須
  5. 町名

    必須
  6. 丁目

    必須

※地域・物件によってお取り扱いができない場合がございます。あらかじめご了承ください。

3つの買取サービス

無料査定を承ります