不動産売却のノウハウ
マンションを売却して住み替え(買い替え)する場合、「売り先行」と「買い先行」の二つの方法があります。
マンション売却から住み替えの流れや注意点を解説します。
不動産お役立ちコラム 不動産売却2024年7月12日
マンションを売却して住み替える場合、先に売却する「売り先行」と購入を先にする「買い先行」との二つの方法があります。それぞれの流れと成功させるポイントについてお伝えしていきます。
売り先行は先に家を売って資金を確保する方法なので、資金計画が立てやすく安全・確実な点がメリットです。新居購入時にある程度の資金イメージがあり、無理をしなくて済むのは最大のメリットでしょう。
以下は、売り先行でのおもな「住み替えの流れ」です。
売却の流れ | 購入の流れ |
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売却の相談 ▼ |
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査定依頼 ▼ |
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資金計画 ▼ |
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物件調査・価格査定 ▼ |
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媒介契約 ▼ |
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売却活動 ▼ |
▼ |
売買契約を結ぶ ▼ |
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仮住まいに引っ越し ▼ |
物件見学 ▼ 住宅ローン契約 |
引渡し(残代金の受領) ▼ |
売買契約 ▼ 住宅ローン契約 |
確定申告 | 引渡し (残代金の支払い) ▼ 入居準備 |
引渡し ▼ 確定申告 |
売り先行のデメリットとして、所有物件が売れた後の住まいを確保しなければならないこと、仮住まいの賃料や、2回分の引っ越し代がかかることがあります。
これを回避し売り先行を成功させるには、現所有物件の売却と新居の購入の日をできるだけ近づけることがポイントになります。
現所有物件が売れたのに新居が見つからないという事態を回避するには、売買契約をしてから実際に引渡しをするまでの期間に猶予を持たせることが大切になります。
そのためには、売主と買主の間に立って調整をしてくれる不動産会社の交渉力が重要です。
売却には不動産会社選びが大切だといえるでしょう。
新居について、「なかなか魅力的な物件が見つからない」ことも十分に起こりえます。
だからといって、優良な買主が現れたのに売却しないという選択はあり得ません。
このような場合には、魅力的な物件が見つかるまで一時的に賃貸生活をするのも有効です。
現所有物件が売れているということは、次のマンションの購入資金が確保できているということなので、焦る必要はありません。
買い先行の場合は、物件を買う→新マンションに住み替える→現所有物件を売る、という流れになります。
買い先行で住み替えるメリットは、現所有物件に住みながら次に住む物件をじっくり探せることや、所有物件を引渡してからの仮住まいにかかる費用が不要なことなどがあげられます。
以下は、買い先行でのおもな「住み替え」の流れです。
売却の流れ | 購入の流れ |
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売却の相談 ▼ |
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売却相談 (購入物件のめどが立ち次第) ▼ |
物件見学 ▼ |
査定依頼 ▼ |
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物件調査・価格査定 ▼ |
売買契約 ▼ |
媒介契約 ▼ |
住宅ローン契約 ▼ |
売却活動 ▼ 売買契約 |
▼ 入居準備 ▼ |
引渡し準備 ▼ |
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引っ越し ▼ |
引っ越し ▼ |
引渡し (残代金の受領) ▼ |
確定申告 |
確定申告 |
売却資金を当てにせず新居を購入するため、予算の裏付けや資金力のある場合におすすめです。
手元に資金がない場合には「つなぎ融資」などの短期融資が有効です。
「買い先行で住み替える場合、購入資金はどうしたらいいのか」と不安になるかもしれませんが、実は買い先行の場合、金融機関のつなぎ融資を活用できます。
つなぎ融資とは買い先行であるがゆえに手元に購入資金がないといった場合に、十分な資金が手に入るまでの間、一時的に金融機関が「つなぐ」短期融資のことをいいます。
借入期間は大体1年以内と考えればいいでしょう。売却が決定した段階で一括返済するため、1年以内に現所有物件を売るめどがつきそうなのであれば、非常に効果的な手段といえます。
売り先行にしても買い先行にしても、それなりのリスクは発生します。
これらのリスクを回避したいのであれば、買取保証という選択肢もあります。
買取保証とは、現所有物件を一定期間売却活動をしても売れなかった場合に、不動産会社があらかじめ取り決めていた金額で買い取る方法というものです。
買取保証には期限があるため、売却のタイミングに悩むことなく進めることができます。
一定期間後には必ず買い取ってもらえるため、金融機関にとっては「必ず資金回収できる融資」というメリットがあるため、つなぎ融資も利用しやすくなります。
デメリットとしては、買取保証額が市場で買主を見つけた場合の売却価格より低いため、手元に残るお金が減ってしまうことがあります。
実際にマンションを住み替える場合の二つの注意点を説明します。
一つは、マンションは売却する時にも費用がかかるということです。
そしてもう一つは、今ある住宅ローンを完済しないと住み替えができないということです。
順に説明していきます。
マンション売却時にかかる費用としては、次のようなものがあげられます。
項目 | 内容 | 相場 | 注意点 |
---|---|---|---|
印紙税 | 契約書に貼付する印紙代 | 200円〜480,000円 | 売買価格によって異なる |
仲介手数料 | 不動産会社への報酬 | 成約価格×3~5% | 法律で上限が定められている |
ローン返済時の事務手数料 | 現所有物件の住宅ローンを完済する時の手数料 | 5000円から3万円 | 金融機関によって金額が違う |
登録免許税 | 不動産登記の際にかかる税金 | 不動産の1個あたり1,000円 (抵当権抹消) |
自分でできる場合とできない場合がある |
司法書士への支払い | 抵当権抹消登記の報酬 | 1万円〜1万5000円 | 司法書士と相談 |
譲渡所得税 | 売却益が発生した際にかかる税金 | 売却益に連動 |
出典:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置
マンション購入時にかかる費用としては次のようなものがあります。
項目 | 内容 | 相場 | 注意点 |
---|---|---|---|
手付金 | 契約時に売主に支払う | 物件の1割程度 | 物件引渡時に残債を支払う |
仲介手数料 (中古の場合) |
不動産会社に支払う | 物件価格×3~5% | 支払うタイミングは会社と相談 |
印紙税 | 住宅ローン利用のためにかかる費用 | 借入金額と金融機関による | 融資手数料や保証料、保険など |
各種保険料 | 火災保険、地震保険などがある | 保険会社とその商品で変わる | 保険期間は最長5年間 |
登録免許税 | 不動産登記にかかる税金 | 所有権移転、抵当権設定登記など | |
司法書士への支払い | 各種登記手続きの報酬 | 数万円程度 | 司法書士と相談 |
税金、管理費などの精算金 | 固定資産税や積立金を精算する | 物件価格や管理組合による | 引渡し時期に合わせ売主買主で按(あん)分 |
不動産取得税 | 不動産取得時にかかる税金 | 固定資産税評価額×4% | 登記の後日に納税通知書が買主に届く |
購入の折には、現所有物件から新しいマンションに引っ越すための引越費用がかかります
売り先行の場合はいったん仮住まいに入るため、引越費用は2回分必要になります。
仮住まいを賃貸住宅にする場合、入居に関する諸費用や月々の賃料などが必要です。
住宅ローンの性質として、原則ひとり(1世帯)1件の融資しか受けられません。
つまり、現所有物件を住宅ローン利用で購入していた場合、このローンを完済しなければ新マンションを購入するための住宅ローンを利用できないのです。
しかし住み替えの場合、一時的措置として売り物件の融資が残っていながら購入物件の融資を受けられるケースがあります。
ダブルローンとは、現所有物件の住宅ローンが残っている状態のまま、新マンションの住宅ローンを組んで新居を購入することを指しています。
ダブルローンを利用する場合、買い先行で手続きを進めているケースが多いので、マンションに先に入居でき、仮住まいの諸費用を払ったりする必要がありません。
結果、空室となった状態での現所有物件を購入希望者に内覧してもらうことができるというメリットも発生します。
一方デメリットは、ダブルローンという言葉どおり、2件の住宅ローンの返済を負担しなければならなくなる点です。
また、ダブルローンを利用する場合、金融機関の融資がとりつけられるのかが焦点になります。
ローンを利用するには返済能力や完済時の年齢条件などをクリアしなければなりません。
ダブルローンのリスクを十分に考慮し、金融機関と協議しながら検討する必要があります。
所有物件が売れた時に手元に残るお金でその物件の住宅ローンが完済できれば何も問題はないのですが、買主から支払われるお金だけで住宅ローンが完済できない場合には住み替えローンを利用する方法があります。
住み替えローンでは、マンション購入のための住宅ローンに、所有物件のローン残債を上乗せして融資を受けることになります。
この形であれば、住宅ローンを一本化でき、所有していた物件の抵当権は抹消できます。
また、もとの住宅ローン完済をするために、手持ちの預貯金を充当する必要がないため、その後の生活が圧迫される不安からも解消されます。
ただし住み替えローンの場合は通常の住宅ローンより金利が高くなります。
金融機関の審査がとおりにくくなることもデメリットとなるでしょう。
現所有物件を売却して新マンションに住み替えるとした時に、おすすめのタイミングはあるのでしょうか。
結論からいうと、マンションを売ったら得をするタイミングは存在しません。
なぜなら、新築の時点から年数が経っていくのに合わせて価格が下がるためです。
これはマンションの性質上、いかに所有している物件に土地分が含まれているとしても、現実的には建物を解体して土地だけを売ることができないからです。
土地だけであれば価格の増減は起こりえます。
しかし建物はどんな構造体の建物であろうと、時が経てばたつほどその価値は下がっていきます。
結果として、新築時以上の価格での売却は望めないため、売って得するタイミングは存在しないのです。
「でも、できるだけ高く売りたい、損したくない」とは誰もが思うことでしょう。
できるだけ損したくないのであれば、マンション取得後5年超10年以内での売却がおすすめです。
理由の一つが、譲渡所得税という税金にあります。
譲渡所得税は、不動産を長く所有しているほうが安くなるのです。
所有期間が5年超か5年以内かで、所得税、住民税の金額は倍近く差が出ます。
手放すことを考えるにしても、最低5年間はその物件を所有していたほうがいいでしょう。
また、築10年以内のマンションなら、早く高く売れます。物件は築25年以内のものに人気が集まるためです。
築15年を超えると設備の不具合や故障が出始めますが、10年以内ならほとんど修繕せずに売れる点もメリットといえます。
ここでマンションを住み替えるメリット・デメリットについて説明しましょう。
メリットとしては、生活様式に合わせた立地の物件を選べること、最新の設備がとりつけられたマンションに住めるため、より快適な住環境を手に入れられること、セキュリティを強化し安心して日々を過ごせることなどがあります。
一方デメリットとしては、所有物件がなかなか売れず、新居に住み替えるまでに長い時間がかかってしまったり、一方、なかなか売れないがために思っていたより安く買いたたかれてしまったりというようなデメリットもあります。
いずれにせよ、間違いのない資金計画と、住み替え後の住宅ローン返済計画が住み替えの成功・失敗を決めることになるのは間違いないでしょう。
定年間近の住み替えは非常に難しい部分があるため、おすすめしにくいです。
理由としては、金融機関の住宅ローンには完済年齢制限があり、定年間近の人がそのタイミングから融資を受けるのはかなりハードルが高くなることがあげられます。
また、定年間近ともなれば年齢も上がってきており、普段から日常的にスポーツをする機会がなければ体力も運動能力も低下している時期でもあります。
仮に融資がついたとしても、慣れた場所を離れて引っ越しの準備をして、などと考えていたら億劫になってしまうかもしれません。
総合的に判断して、定年を意識せずに住み替えできる年代のうちに検討したほうがよいでしょう。