不動産売却のノウハウ
不動産を売却する際、売却が完了した際に仲介をしてくれた不動産会社に報酬を支払います。これが仲介手数料です。では、仲介手数料は無料や値引きすることは可能なのでしょうか。
不動産売却における手数料無料の仕組みや注意点、さらには手数料を抑えつつ高値で売却する方法について詳しく解説していきます。
不動産売却 費用・税金2024年12月11日
不動産売買の際に発生する仲介手数料は、法律によって上限が決まっています。不動産会社はその上限の範囲で、自由に報酬である仲介手数料を設定することができます。当然無料とすることも可能です。
売買代金 | 仲介手数料(税抜) |
---|---|
200万円以下 | 5% |
200万円超 400万円以下 | 4%+2万円 |
400万円超 | 3%+6万円 |
たとえば、3000万円の不動産を売却した場合、
3,000万円×3%+6万円=96万円(税抜)
96万円(+消費税)が仲介手数料の上限となります。
不動産売却において、手数料が無料になるケースがいくつか存在します。それぞれには事情やデメリット、リスクがあることを知っておく必要があります。主なケースについて詳しく見ていきましょう。
不動産会社が売主と買主の両方から依頼を受ける「両手仲介」の場合、売主側の手数料を無料にすることをうたっている不動産会社があります。この仕組みは、通常不動産会社が売主と買主の双方から仲介手数料を受け取るところを、無料にするという仕組みです。
一見すれば、売主にとっては大きなメリットと感じるかもしれません。しかし、両手仲介にて取引することを前提としているため、たとえば他の不動産会社が購入検討者を紹介したとしても、自社で買主を探すことを優先するため、理由をつけて断ってしまうケースなどもあり、スムーズな売却の機会損失になっているかもしれません。
また、長期間売却できないことで、売却価格を値下げするといった事態にもなりかねないため、両手仲介での取引には注意しましょう。
不動産会社が直接物件を買い取る「買取」で売却する場合、仲介手数料は発生しません。この方法では、不動産会社が物件査定を行い、買取価格を提示します。売主は手続きの手間を省け、迅速に現金化できるというメリットがあります。
ただし、不動産買取は通常の市場価格よりも10~30%程度安い価格で買い取られる可能性があることに注意しましょう。不動産会社は買取後に物件にリフォームなどを施し、利益を乗せて転売するため価格が低くなります。
売主が自ら買主を見つけ、個人間で取引を行う場合、不動産会社を介さないため当然ながら手数料が発生しません。SNSや個人のネットワークを活用して買主を探し、契約書の作成や登記手続きなどは司法書士や行政書士に依頼することになります。
個人間売買は日本ではかなり稀なケースです。たとえば、適正価格の設定が難しく、買主に価格を納得させることが難しいことがあげられます。また、個人間売買の場合、金融機関が融資をしないケースも多いでしょう。そのほかにも、買主とのトラブルリスクが高く、支払いの遅延や契約不履行などの問題が発生する恐れがあります。さらに、物件の瑕疵(かし)に関する責任を直接負うことになり、手続きの煩雑さや法的知識の不足により、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあります。
「仲介手数料無料」をうたう不動産会社が増えています。これは大手だからといって必ずしも信頼できるわけではありません。手数料無料の裏には様々な事情があり、売主にとって不利益になるケースも少なくありません。
不動産売却において最も重要なのは、高く売ることと安全に取引を完了させることです。仲介手数料の有無だけでなく、総合的に判断して信頼できる不動産会社を選ぶことが大切です。
手数料無料を強調する会社の中には、物件を安く買い叩いたり、査定価格を低めに設定し早期売却を促したりする場合があります。また、アフターフォローが不十分だったり、契約後のサポートが乏しかったりすることもあります。
こうした問題を避け、高値で売却するためにも、また詐欺などのトラブルに巻き込まれないためにも、不動産会社選びが非常に重要です。
信頼できる不動産会社を選ぶためには、いくつかのポイントに注目する必要があります。まず、過去の取引実績や顧客の口コミ、地域への精通度などの実績と評判を確認しましょう。質問や相談に丁寧に答えてくれるか、専門用語をわかりやすく説明してくれるかなど、コミュニケーション能力も重要です。
さらに、取引の流れや費用について明確に説明してくれるか、物件の瑕疵や市場動向について正直に情報提供してくれるかなど、情報開示の透明性も大切です。加えて、売却後のアフターフォローが充実しているか、トラブル発生時の対応方針が明確かなど、サポート体制も確認しておきましょう。
仲介手数料を完全に無料にすることは難しくても、手数料を抑えつつ高値で売却する方法はあります。
前述の通り、不動産会社による買取は手数料が発生しないケースが多いです。この方法は手続きが簡単で、迅速に現金化できるというメリットがあります。また、物件の状態が悪くても売却できる可能性があります。
しかし、市場価格よりも安く売却される可能性が高いというデメリットもあります。そのため、複数の会社から買取価格を提示してもらい、比較検討することが重要です。
仲介手数料を数万円下げることよりも、売却価格を上げることの方が、最終的な手取り額が大きくなる可能性が高いです。
- 仲介手数料を10万円下げる場合:
売却価格2,000万円 - 仲介手数料(3% + 6万円)60万円 = 1,940万円
- 売却価格を50万円上げる場合:
売却価格2,050万円 - 仲介手数料(3% + 6万円)67.5万円 = 1,982.5万円
このように、売却価格を上げることで、手数料が増えても最終的な手取り額が増える可能性があります。
高値での売却を実現するためには、まず信頼できる不動産会社に依頼することが大切です。経験豊富で信頼できる不動産会社は、適切な価格設定ができ、効果的なマーケティング戦略を立てられ、交渉力が高く、市場動向に精通しているという強みを持っています。
また、売り出すタイミングを見極めることも重要です。不動産市場は季節や経済状況によって変動するため、春の転勤や入学シーズン、景気が上向きの時期、金利が低い時期、税制優遇措置が実施されている時期などを狙うことで、高値売却の可能性が高まります。
さらに、適切な価格設定も高値売却のカギとなります。周辺相場を徹底的にリサーチし、物件の特徴や強みを的確に評価し、必要に応じて価格の見直しを行うことで、早期売却と高値売却の両立が可能になります。
不動産売却時には、仲介手数料以外にも様々な費用がかかります。
主な費用としては、登記費用(登記簿謄本取得費用、抵当権抹消登記費用など)、税金(譲渡所得税、住民税、不動産取得税など)、ローン関連費用(繰上返済手数料、抵当権抹消費用など)、その他(引越し費用、不動産鑑定評価費用など)があります。これらの費用を事前に把握し、売却によって得られる利益を正確に計算することが重要です。
売却における税金や控除についてはこちらで詳しく紹介しています。
不動産売却時の税金を抑えるためには、いくつかの節税方法があります。まず、居住用財産を売却する際に利用できる3,000万円特別控除があります。これは、売却する家に住み始めてから3年以上経過しており、売却価格が1億円以下である場合に適用されます。
また、売却した不動産の代わりに新たな不動産を購入する場合、一定の条件を満たせば課税を繰り延べることができる買換え特例も活用できます。さらに、確定申告をすることで、不動産売却による所得を他の所得と損益通算できる可能性もあります。
相続した不動産の場合は、相続から3年以内に売却すれば、取得費加算の特例が使えます。これにより、譲渡所得が少なくなり、税金を抑えられる可能性があります。
最後に、個々の状況に応じた最適な節税方法を見つけるためには、税理士や不動産の専門家に相談することをおすすめします。
売却における税金や控除についてはこちらで詳しく紹介しています。