不動産売却のノウハウ
立地や周辺環境などが原因で需要が低く、売却したくても売れない土地があります。
そういった不動産を相続してしまった場合、どのような対策が有効なのでしょうか。今回は、売れない土地を相続した際の対処法について解説します。
2022年8月8日
親が亡くなり相続したものの、既に離れた場所に自宅を持っており利用する予定がないため売却したい。あるいは、相続税を支払うために土地を売却しようとしても、なかなか買い手が見つからず思うように売却できないことがあります。
実際にどのような土地を指すのでしょうか。
売れる土地はどういったものかを考えてみましょう。
市場にでるからには土地も商品であり、需要と供給のバランスが重要です。
すなわち、次のような土地は需要が高いために売れやすい土地といえます。
このような土地なら購入後利用しやすいため人気があります。
土地を売りたくてもなかなか売却できないときは、次の4つの視点で検討してみましょう。
駅から近い土地や大型商業施設が近くにある土地は利便性が高く売却しやすい土地ですが、利便性が低くなれば売却がしにくくなります。
その他、土地の近くに墓地や汚水処理場などの嫌悪施設がある場合や電気・ガス・水道などのインフラが整備されていない場合にも買い手がつきにくく、売却が難しい土地になります。
家を建てるためには道路と接している必要がありますが、接道していない場合は家を建てることができないために土地利用が制限されてしまい、買い手がなかなかみつかりません。
また、農地には農地法の規制がありますから農地以外に転用することや権利の移転が制限されています。
正方形に近い土地であれば利用がしやすく売却しやすい土地ですが、細長い土地や三角形など角が残る不整形地、のり面が多い土地は有効利用できる面積が少なくなりますから売却しにくい土地になります。
また、土地が道路よりも下がっていれば、道路面まで土地のかさ上げが必要になり、その費用を踏まえて敬遠されてしまいます。
土地は狭すぎても利用が難しいですが、広すぎる場合も有効活用が難しくなります。
隣地との境界が確定していない土地、隣地からの構造物が越境しているような土地も、そのままにしておけば買主に負担が引き継がれますから売主の責任できちんと整理しておく必要があります。
長い間放置されているために土地が荒れていれば現地を見た印象が悪いために買主の買う気がそがれることもありますから、きれいに管理をすることも必要です。
盛土や埋立地などは地盤が軟弱な可能性がありますから注意しましょう。
最近は特に自然災害が多く土地の崩落や液状化を心配されている方が多くなっています。このような場合には地盤調査をしておけば、購入希望者が安心して購入しやすくなるでしょう。
また、地中に異物が残されている場合や、土壌汚染が心配される場合も売却しにくくなりますから、土地の歴史も調査しておくと安心です。
生産緑地を売却することは難しいので、売却には注意が必要です。
生産緑地とは、市街化区域内の農地で「生産緑地」に指定された農地を指します。
生産緑地に指定されると相続税・贈与税の納税猶予が受けられることや固定資産税が軽減されるなどのメリットがあります。
その反面で生産緑地は農業を続けることが義務付けられていますから、農業をやめて農地を売却したり一定の建物を除いて建築したりすることができません。
生産緑地の指定を解除するためには以下の条件が必要です。
生産緑地の指定を解除されても一般に売却はできません。
まず市町村に買取を申し出ることが必要です。
1カ月以内に市町村が買取をしないで、第三者へ買取のあっせんをしても3カ月以内に買取る方がいなかった場合にはじめて制限が解除されて一般への売却が可能になります。
このように生産緑地の場合一般に売却できるまで手数がかかること、さらに指定解除の理由によっては相続税などの納税猶予がなくなりますから注意しておきましょう。
相続した土地がすぐに売れる土地ならなにも問題はありませんが、売れにくい土地・売れない土地だった場合はどのような問題があるのでしょうか。
なかなか売れない土地を持ち続けることで起こりうるデメリットを紹介します。
売りたくても売れない土地を持ち続けていれば、以下のような不利益が生じるおそれがあります。
順を追って解説します。
固定資産税は、不動産を所有しているだけで課税される税金です。
土地が生み出した利益ではなく、土地そのものの価値に対して課税されるので、原則として土地を所有する限り、税金をとられてしまいます。
建物があれば土地の固定資産税は軽減されますが、建物が老朽化すれば老朽化による危険があり、特定空き家に指定されると土地の軽減もなくなり最大6倍にまでなります。
最近は自然災害が多く発生していますが、いつ持っている土地が大雨や地震などによって崩落するかわかりません。
がけ崩れや崩落した土地によって損害が発生すれば損害賠償責任を負担しなければならなくなります。人命に関わることもあるため、金銭的な負担で図ることはできない問題といえます。
建物があれば定期的な維持管理が必要です。
放置されている空き家は犯罪の温床になりがちで、火事のリスクも増します。
もしも建物や塀が倒壊すれば通行者に危険が及びますし、所有者は損害賠償責任を負ってしまいます。
管理されていない空地はゴミや不用品の投棄場所になりやすいものです。
害虫が繁殖したり、動物のたまり場になってしまい悪臭が発生したりすれば近隣住人から所有者に対して苦情がきます。
投棄されたゴミの処分も自分で行うことになります。
日本全体で人口減少が進んでいますが、地方にいけばなおさら深刻な問題です。
土地の需要は人口が多ければ多いほどあるものですから、人口が減少すれば需要も減少し、土地の価格も下落するおそれがあります。
利用する予定もないし、売るにも売れない土地だからといって相続登記をしないまま放置するのは得策ではありません。
相続登記をしなくても、相続した事実によって固定資産税の負担は相続人がしなければなりませんし、万一損害賠償責任を負うような場合にも相続人が負担することになります。
相続登記をしないまま、相続が何度も開始してしまうと相続関係が複雑になってしまい、相続人を特定するために多額の費用と時間がかかってしまいます。
普段連絡をとっていない、顔を見たこともない関係にあれば遺産分割協議もうまくすすみません。
なるべく早い段階で、話し合いができる関係の中で遺産分割協議を行うのが賢明です。
相続した土地を買いたい方から、購入の申し入れがあっても相続登記が済んでいなければ売却はできません。
そのような時に複雑な相続関係であれば、すぐには相続登記ができないために、せっかくの購入申出もフイになる可能性もあります。
令和6年4月1日からは相続登記が義務化されます。
このような理由から早めに相続登記をされるのをおすすめします。
売れない土地をただ持っているだけでは、先のような不利益を被るおそれがありますから、何らかの対策を早めにとっておきましょう。
売れない土地は時間が解決するわけではありません。
時間がたつごとに固定資産税の負担は多くなり、不利益を被る可能性は高くなります。
それでは、どのような対策をとることができるのでしょうか?
次の章では、売れない土地を手放す方法や処分の方法について解説します。
売れる見込みのない土地の対策は
に分けることができます。
詳しくみてみましょう。
売れない土地に対してとることができる対策は次の4つが基本です。
相続しても利用する予定がなく、売ろうとしても売れない土地なら相続しないことも可能です。
相続には、相続財産を引き継がない「相続放棄」の方法があります。
ただし、相続放棄は亡くなった方の財産全部を相続しないことですから、価値がある土地や価値がある宝石は相続するけど、いらない土地だけ放棄するといったことはできません。
相続放棄は亡くなってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申立てなければならないこと、相続財産の一部でも処分や取得をした場合には、相続放棄ができなくなりますから、注意しましょう。
また、相続放棄をしても管理責任を負うことがありますから状況に応じて慎重に行う必要があります。
相続した土地に先の「売れない理由」に該当する点はありましたか?
境界が未確定なら隣地の方と境界の確認をしましょう。
隣地からの越境があれば隣地の所有者に相談して撤去することの覚書を結んでおきます。
土壌汚染や地盤の軟弱性に問題がありそうなら地暦調査や地質調査を依頼しましょう。
一般の方は購入しなくても隣地の方なら地続きの使える土地が増えて便利ですから購入してくれる可能性があります。
建物が老朽化していれば建物を壊して更地にしたうえで売却することも検討しましょう。
土地の立地条件や法律上の制限などによって、改善が難しい場合には売出価格を見直すなど売却方法を変えてみましょう。
不動産会社には得意分野があります。
賃貸管理を専門にしている会社では売却仲介はうまくいきません。
また一般の住宅と事業用地では購入希望者が異なりますから、売却を依頼する不動産会社を変えてみるのも一つの方法です。
空き家があれば地方自治体の空き家バンクに登録をしてみましょう。
インターネットに掲載されて全国から興味がある方が閲覧をしています。
後から詳しく解説しますが、不動産会社に直接買取ってもらえないか相談をしてみるのもよい方法です。
売れにくい土地であればいっそのこと自分自身が活用できないか検討してみましょう。
太陽光発電などに利用できれば売らずに持ち続けることが可能です。
買い取る方が現れなければ寄付や贈与はできないでしょうか。
隣地の方ならお金を払ってまでは欲しくはないけど、ただならもらってもよいといわれる可能性はあります。
寄付や贈与では代金はただでも贈与税などの税金がかかることに注意しましょう。
無償でもらった方には贈与税がかかります。
贈与した相手が一般の企業であれば贈与した方に譲渡所得税がかかりますから気をつけておきましょう。
自治体が寄付を受け取ってくれるとよいのですが、寄付を受けると今まで受け取っていた固定資産税が受け取れなくなり減収となること、また、土地を所有することで管理費や維持費の負担が増えることなどから、自治体が寄付を受けることは期待できません。
「相続土地国庫帰属制度」が令和5年4月27日から施行されます。
これは使い道がない土地を国に引き渡せる新しい制度です。
現在でも、所有権の放棄は、理論上は可能とされており、所有者がいないモノは国の所有になると定められています。
しかし、どのような物でも国のモノとなってしまうと管理費用は莫大になりその物がもっている問題も引き継ぐことになってしまいますから、国が引き取ることはなく必要な登記手続きにも国が協力することはありませんでした。
相続税の物納においても国が定める条件に合わなければ国が引き受けることはありません。
この相続土地国庫帰属制度においても引き受けるための一定の条件が定められています。
管理費やその物の不具合による費用を国が負担することになれば税金を使うことになり、ひいては国民の負担が増えてしまうからです。
引き受ける主な条件は以下のようになっています。
国に引き取ってもらうために調査が必要であれば調査費を負担して、10年分の管理費も負担することが必要です。
「不動産買取」とは、一般に売却仲介を依頼しないで不動産会社に直接買取ってもらうことです。
不動産の引渡し、売買代金の受取時期によって即時買取と買取保証の2通りの方法があります
即時買取なら売買交渉が成立すればすぐに代金の支払をしてくれます。
早ければその日のうちに買取をしてくれる不動産会社もありますが、通常1週間程度はかかるものです。
その間に不動産会社は不動産登記記録の調査や現地調査を行い、売買代金を査定します。
なるべく早く土地を現金化したい場合に向いている方法です。
買取保証は、不動産会社が仲介として売却活動を行いますが、約束した期間内に売却できなければ不動産会社が購入してくれる契約方法です。高く売却できる可能性を残しつつ、長く売れ残るリスクを軽減してくれます。
直接買取は売買代金が安くなりがちなデメリットがありますが、以下のようなメリットがあります。
いらない土地を相続すれば負担があり、将来的に不利益を被るおそれがありますから、不動産買取も含めて信頼できる実績豊富な不動産会社に相談しましょう。