不動産売却のノウハウ
急な転勤や離婚など、突然家を手放さなければならないタイミングが訪れることがあります。また、家を購入してそれほど年月がたっていなくても、いまの家を売って住み替えたいと考える方もいます。
住宅ローンを完済していなくても家は売れますが、住宅ローンの残債と家の売却価格によって、売却方法は異なります。
本記事では、住宅ローンが残っている家を売る方法や、そのために必要な基礎知識を解説します。
2022年9月12日
住宅ローンが残っている家がスムーズに売れるかは、アンダーローンかオーバーローンかによって異なります。
アンダーローンとは、家の売却価格が住宅ローンの残債を上回る状態のことをいいます。つまり、家の売却代金で住宅ローンを完済できる状態ということです。
住宅ローンを完済すると、住宅ローンを組むときに家に設定した抵当権を抹消できます。抵当権とは、債務者が住宅ローンを返済できない場合、強制的に家を競売にかけて、その売却代金で債務を回収できる権利のことです。
買主にとって、抵当権が設定されている物件を購入するのは避けたいところでしょう。
安心して家を購入してもらうには、住宅ローン完済と抵当権抹消、そして所有権移転登記を同じ日に行うよう、あらかじめ段取りしておくことが重要です。
所有権移転登記とは、登記簿に登録されている不動産の所有者を変更することです。
オーバーローンとは、家の売却価格が住宅ローンの残債より下回ることです。
アンダーローンと異なり、オーバーローンにはいくつかの問題があります。
住宅ローンの完済ができないため、当然抵当権の抹消もできません。抵当権が設定されたまま売り出すことも難しいでしょう。
売却できたとしても、残った住宅ローンは返済する義務があるため、債務者にとっては大きな負担です。そのため、売却方法は工夫する必要があります。
ここでは、住宅ローンが残っている家を売却する方法をいくつか紹介します。
家の売却価格が住宅ローン残金より上回ったアンダーローンの状態なら、オーバーローンと異なり債権者の承認を得る必要がありません。そのため、スピーディーな売却が可能です。
ただし前述したとおり、住宅ローン残債の支払い、抵当権の抹消、所有権の移転登記を同じ日に行う必要があります。
また、家を売却時に発生する費用を支払う余裕があるかも確認しておきましょう。
仲介手数料や印紙税、登記代以外に、引っ越し代やクリーニング代などの費用がかかります。事前に必ずチェックし、今後の生活の負担にならないようにしましょう。
オーバーローンで家を売る方法は、いくつかの選択肢があります。
貯金など十分な自己資金があれば、住宅ローンの残債が返済できるため、特に問題はありません。
しかし、売却にはさまざまな費用がかかります。また、家を売ったあとの新居や生活のためにも資金が必要です。
余裕を持った資金計画をしっかりと立てて、自己資金を住宅ローンの返済に充てるべきか判断しましょう。
住宅ローンの返済が滞り、返済不能になると家を差し押さえられ競売にかけられます。競売にかけられると家の売却価格が大幅にダウンします。
住宅ローンの返済が滞り、返済不能になると家を差し押さえられ競売にかけられます。競売にかけられると家の売却価格が大幅にダウンします。
競売を避ける方法としてあるのが、任意売却です。
本来、住宅ローンを完済するまで、家は市場に出せません。しかし、任意売却の場合は、債権者の許可を得て、住宅ローンが残っているまま売りに出せます。
売却代金で住宅ローン完済できなくとも、債権者の了承を得られことができれば抵当権の抹消ができます。
ただし、任意売却は住宅ローンを完済できなかったと認識され、信用情報に数年間記載されてしまいます。
住み替えローンとは、売りたい家の住宅ローンと新しく購入する家の住宅ローンをひとつにまとめられるローンです。
住み替えローンにした時点で、家の抵当権は抹消されます。
新しく購入する家の価格以上の金額を返済していくことになるため、融資する金融機関では年収、勤続年数など厳しく審査されます。
ここでは、住宅ローンが残っている家を売る前に、必ず押さえておくべきポイントを紹介します。
まず、住宅ローンの残債を確認する必要があります。確認する方法は3つあります。
住宅ローンを契約した金融機関から輸送される返済予定表で残債が確認できます。
返済予定表は、金融機関によって「返済計画表」など呼び方が異なることもありますが、以下などの明細が記載されています。
基本的には、住宅ローンを締結した金融会社から定期的に郵送されますが、債務者から依頼をした場合のみ送付する金融機関もあるようです。
また、融資を受けている金融機関がオンラインサービスで返済予定表を提供している場合は、登録すればインターネットからの確認も可能です。
金融機関が発行する残高証明書や融資額残高証明書でも、住宅ローンの残債を確認できます。
住宅ローン控除を受ける際に、残高証明書が必要なため、毎年10月初旬~中旬にかけて金融機関から住宅ローン残高証明書が郵送されます。
ただし、住宅ローン契約から10年を過ぎると住宅ローン控除が受けられないため、11年目から住宅ローン残高証明書が送付されなくなります。
住宅ローンを契約した金融機関の窓口で確認できます。
ただし、金融機関の営業時間に行く必要があり、手数料が発生します。
また、銀行届け印やキャッシュカード、通帳など持参する必要があるため、忘れないようにしましょう。
不動産会社に査定を依頼するときに、提出を求められる以下のような書類を事前にそろえておきましょう。
上記6点以外にも、不動産会社から提出を求められる書類があるかもしれません。詳しくは、依頼した不動産会社に確認しましょう。
家の売却時には、さまざまな費用が発生します。
アンダーローンでも、諸費用までカバーできないおそれがあります。どのような費用が発生し、いくらかかるかを事前に必ず確認しておきましょう。
ここでは、代表的なものを3つ紹介します。
不動産会社を通して家を売却した際に発生する仲介手数料が、費用の中で最も高額でしょう。
仲介手数料は、宅地建物取引業法で上限が定められており、売却価格によってそれぞれ以下の簡易計算式で求められます。
不動産の売却価格 | 仲介手数料の上限 |
---|---|
200万円以下 | 売却価格の5%+消費税 |
200万円超~400万円以下 | 売却価格の4%+2万円+消費税 |
400万円超 | 売却価格の3%+6万円+消費税 |
あくまで上限のため、不動産会社との交渉次第で仲介手数料が下がる可能性はありますが、実際は仲介手数料=上限であることが多いようです。
不動産の売買契約書は印紙税の課税対象となる書類です。そのため、印紙を貼付する必要があります。
印紙の金額は不動産の売却価格によって異なります。
また、平成26年4月1日~令和6年3月31日までに作成された売買契約書は軽減措置の対象です。印紙税の本来の税率と軽減後の税率は以下のとおりです。
売却価格 | 本来の税率(円) | 軽減後の税率(円) |
---|---|---|
10万円超え50万円以下 | 400 | 200 |
100万円超え500万円以下 | 2000 | 1000 |
50万円超え100万円以下 | 1000 | 500 |
50万円超え100万円以下 | 1000 | 500 |
500万円超え1000万円以下 | 1万 | 5000 |
1000万円超え5000万円以下 | 2万 | 1万 |
5000万円超え1億円以下 | 6万 | 3万 |
1億円超え5億円以下 | 10万 | 6万 |
5億円超え10億円以下 | 20万 | 16万 |
10億円超え50億円以下 | 40万 | 32万 |
50億円を超える | 60万 | 48万 |
参考:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」
家を売却するときは、所有権を売主から買主に変更する所有権移転登記をします。所有権移転登記の費用は、基本的には家を買う側が行います。
ただし、住宅ローンの残債がある場合は、抵当権抹消が必要になりますが、その費用は売る側が負担します。また、一般的には司法書士へ依頼するため、依頼料もかかります。
金額は依頼する司法書士や状況によって異なるため、事前に確認しましょう。
住宅ローンが残っている家を売るときは、売却価格がカギとなります。売却価格を知ることで、オーバーローンになるか、アンダーローンになるかがわかります。
しかし、一般的な不動産会社に仲介を依頼する売却方法の場合、査定価格と売却価格に差が出ます。買主との交渉で売却価格が変動して、想定より低い価格で家が売れてしまうことがあるからです。
そのため査定価格だけで、アンダーローンだと判断するのは危険です。最終的な売却価格が決まった段階になって、住宅ローンの残債が払えないと焦ってしまうおそれがあります。
そこでおすすめなのが、不動産買取の査定依頼をすることです。
不動産買取は、不動産会社が仲介をして買主を探す不動産仲介と違い、不動産会社が直接買い取ってくれる方法です。買主との交渉などがないため、査定価格のまま買い取ってくれるケースがほとんどです。
不動産仲介で売れなくても、不動産買取であれば早く確実に売れるでしょう。
買取価格は、不動産仲介による売却価格の約7~8割です。しかし、アンダーローンだと思っていたのに、あとになって実はオーバーローンだったと判明するような事態になりません。
住宅ローンが残っている家を売るときは、住宅ローンの残債と家の売却価格が重要です。より正確なシミュレーションをするためにも、まずは不動産買取の査定依頼をしましょう。