不動産売却のノウハウ

タイトル画像

不動産取引の契約不適合責任をわかりやすく解説!
期間や免責の特約など売主の注意点は?

ある物の売買契約が成立すると、買主は代金を支払い、売主は売買の対象になった物(目的物)を引き渡します。誰しもが日常で行う買い物と同じです。

しかし、すべての売買がトラブルなく完了するわけではありません。

なぜなら、買主が代金を支払うのは、目的物が代金に値すると期待しているからにほかなりませんが、引き渡される目的物がその期待に一致するとは限らないからです。

売買で目的物を巡るトラブルが起こったとき、買主が泣き寝入りするしかないのはあまりにも不公平です。そのため、買主を救済するための「契約不適合責任」が、民法に規定されています。

今回は、不動産取引における契約不適合責任についてわかりやすく解説します。

2023年1月16日

目次

契約不適合責任の基礎知識

契約不適合責任とは何か、知っておくべき基礎知識を紹介します。また、瑕疵担保責任との違いも理解しておきましょう。

契約不適合責任とは

契約不適合責任をわかりやすくいえば、「買う約束をした物と現物が違う」という買主の主張を認めて、売主に負わせる責任です。

民法第562条から第564条までに規定されており、条文では「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき」が、契約不適合責任の発生要件です(第562条第1項)。また、売買によって買主に移転した権利も対象です(民法第565条)。

契約不適合と目的物の品質

住宅が通常備えているはずの品質は、わざわざ売買契約書に明記されません。たとえば、居住を前提として売買される住宅は、屋根や壁で雨風をしのぎ、寝食をする空間が確保されていて、平穏に暮らせる建物だと当たり前に想定されています。

売買契約書に明記されていないからといって、契約上で想定されている品質に欠けた住宅を売ってよいわけではなく、売主は契約不適合として責任を追及されます。

目的物の種類と数量は、契約と異なる場合に判明しやすいですが、品質については主観的な部分もあります。売主と買主の意識差が大きい場合はトラブルが発生するおそれがあるため、売主は契約前にしっかりと説明する必要があります。

瑕疵担保責任との違い

契約不適合責任は、2020年4月1日から施行された民法に盛り込まれた規定です。それまでは、瑕疵担保責任と呼ばれる売主の責任が規定されていました。瑕疵(かし)とは、不具合や欠陥の存在を意味しています。

瑕疵担保責任では、買主が注意を払っても知り得なかった不具合や欠陥(隠れた瑕疵)に限って、売主が責任を問われていました。しかし、買主が瑕疵を知らなかったかどうかは常に争いの原因でした。

そこで契約不適合責任では、契約との適合性に焦点を絞り込みました。つまり、契約に適合した目的物が引き渡されていないとき、買主は売主に責任を追及できます。

瑕疵担保責任よりも買主の請求権は拡大され、同時に売主の責任が重くなっています。

契約不適合責任を問われるとどうなる?買主が請求できる権利とは

契約不適合責任で認められた買主の請求権は、以下の4つです。

  • 追完請求権
  • 代金減額請求権
  • 損害賠償請求権
  • 契約解除権

このうち、追完請求権と代金減額請求権は、契約不適合責任で追加されました。

追完請求権

買主は、引き渡された不動産が契約に適合していないとき、売主に対し下記のいずれかで、完全な(契約に適合した)状態にする請求ができます。

  • 目的物の修補
  • 代替物の引渡し
  • 不足分の引渡し

ところが、不動産そのものは唯一の存在ですから、代わりの物や不足分を引き渡して契約に適合させる対応はなかなか考えられません。そのため、雨漏りのような不動産の一部機能に契約不適合があるときは、修補(修理や補修)で対応するしかないでしょう。

引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。

引用:e-Gov法令検索「民法」第五百六十二条

代金減額請求権

買主が、相当の期間(売主が対応できるだけの期間)を定めて追完請求をしたにも関わらず、売主が対応しないときは、契約不適合の程度に応じて代金の減額を請求できます。

一方で、契約不適合の内容によっては、売主が対応できないケースも考えられます。たとえば、契約上で100坪の土地売買だったはずが、実際には99坪しかなくても、売主には足りない1坪を追加で引き渡す方法がありません。

このように売主が追完できない場合は、買主が追完を求めなくても代金減額(例では1坪分の減額)を請求できます。売主が追完を拒絶した場合や、契約に適合する見込みがない場合も同様です。

次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
一 履行の追完が不能であるとき。
二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。

引用:e-Gov法令検索「民法」第五百六十三条

損害賠償請求権

瑕疵担保責任で認められていた損害賠償請求権は、契約不適合責任でも認められています。契約に適合しない不動産を引き渡された結果、買主に損害が生じた場合は、売主に損害賠償を請求できます。

ただし、売主に帰責事由(落ち度)がなければ損害賠償請求できません(民法第415条第1項ただし書き)。この点は、契約に適合しないことのみを要件とした、追完請求や代金減額請求とは異なりますので注意しましょう。

契約解除権

売主が、相当の期間を定めた追完の請求に応じないときは、買主から契約を解除できます。これを、催告解除といいます。

しかし、契約との不適合が「契約及び取引上の社会通念に照らして」軽微なときは解除できません。

当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

引用:e-Gov法令検索「民法」第五百四十一条

また、売主が追完できない、売主が追完を拒絶したなど、契約に適合する見込みがない場合は、相当の期間を定めた追完を請求しなくても、買主から解除可能です。これを、無催告解除といいます(民法第542条)。

これら契約解除の要件は、代金減額請求の要件と重複します。そのため、売主が追完の請求に応じない場合は、買主は代金減額請求か契約解除を選択するでしょう。

不動産売却で売主が気をつけたいポイント

写真

契約不適合を理由に、買主から何らかの請求がされるリスクを考えると、売却する不動産について買主との情報共有が重要だとわかります。

契約との適合性は、仲介の不動産会社が作成する売買契約書や重要事項説明書がすべてではありません。あとから「そのようなつもりではなかった」と主張されないように、買主との合意は不明瞭な部分をできるだけ減らす努力が大切です。

不動産売却において、売主が気をつけたいポイントをいくつか紹介します。

責任を問われる具体的なケース

例として、売主が雨漏りに気づかず、買主へ告知もせずに住宅を売却したケースを考えます。

この場合、買主は雨漏りの修繕を請求でき、売主が修繕に応じないときは、修繕費用相当分を売却代金から減額する請求も可能です。雨漏りは、居住性を損なう重大な不具合のため、その程度がひどければ契約を解除されるおそれもあります。

また、雨漏りが原因で損害が生じていると損害賠償請求も考えられますが、雨漏りを知っていて隠していたなど、売主に責任がなければ請求の要件を満たしません。もっとも、本当に知らなかったと証明するのは難しく、トラブルは避けられないでしょう。

免責の特約について

契約不適合責任は、当事者の合意(契約上の特約)によって一部または全部を免責できます。たとえば、買主の請求権を追完請求だけに限定する、売主が契約不適合責任を負わないとするなど、契約の自由は尊重されます。

例外的に、契約不適合責任を負わない特約を設けても、知りながら告げなかった事実については責任を免れません(民法第572条)。つまり、売主が契約不適合を意図的に隠したケースまで、免責されるものではないということです。

契約不適合責任の期間

買主は、目的物の種類や品質に関する契約不適合を知ってから、1年以内に売主へ通知しなければ追完などの請求ができません。また、数量や権利の契約不適合に通知の要件はありません。

ただし、以下どちらかの場合は、要件から1年以内の通知が外されてしまいます。

  • 売主が契約不適合を知りながら目的物を引き渡した
  • 売主の重大な過失で契約不適合を知らなかった

売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。

引用:e-Gov法令検索「民法」第五百六十六条

なお、買主の請求期間は、一般的な債権の消滅時効と同じで、請求できると知ってから5年または請求できるときから10年です。買主は、契約不適合を認識したと同時に請求できると知るため、その時点から5年のケースが多いと考えられます。

不動産買取なら契約不適合責任がない

契約不適合責任は瑕疵担保責任よりも買主の請求権が拡大され、売主にとって売却後のリスクが拡大しました。

そのため、売主としては契約不適合責任が一部でも免責される方向にしたいでしょう。しかし、買主が免責に応じなければ売買契約が成立しません。個人を対象とした不動産売却は、以前よりも売りにくくなったといえるのではないでしょうか。

一方、不動産買取は、不動産会社が買主となって直接不動産を買い取る方法です。そのため、不動産買取では契約不適合責任を免責するのが通常です。

契約不適合責任に問われるリスクを回避して不動産を売却したいなら、不動産買取はより有効な方法のひとつといえます。

小田急不動産にご相談ください

不動産の売却査定価格を
無料でご提案いたします

  1. Step.1

    OK
  2. Step.2

    OK
  3. Step.3

    OK
  4. Step.4

    OK

※地域・物件によってお取り扱いができない場合がございます。あらかじめご了承ください。

3つの買取サービス

無料査定を承ります