不動産売却のノウハウ
リースバックとは、住んでいる家を売却し、まとまった資金を手に入れながら今の家に賃貸で住み続ける方法です。
年々利用者が増えているリースバックは自宅を現金化する他の方法と比べて、現金化が早いこと、資金の使い道に制限がないことなどの特徴があります。
一方でトラブルも多く、「リースバックはやばい」と噂されることもあります。「リースバックはやばい」といわれる理由を、実際のトラブル事例を交えて紹介します。
不動産売却 リースバック2023年7月10日
「リースバックはやばい」といわれるのは、以下のような理由があります。
リースバックの家賃は、周辺相場よりもやや高めに設定されます。家賃は一般的に次のような計算式で求められます。
リースバックの家賃=買取価格 × 期待利回り ÷ 12カ月
期待利回りは、投資した費用に対して、その不動産が1年間に見込める収益額のことです。期待利回りは、買取価格が低いときには高い水準で設定されます。つまり買取価格を高く設定すれば、家賃も高くなる計算です。
リースバックの家賃が高いために、住宅ローンを返済したにもかかわらず、家賃の負担感がローン返済時と変わらないケースも少なくありません。さらに、高い家賃が支払えなくなり、退去を迫られた事例もあります。
リースバック契約中に、家賃が値上げされるケースもあります。
契約時に口約束で「家賃は変わらない」と聞いていたのに、実際には値上げされたというケースも多いです。
家賃が値上げされる原因の多くは、オーナーが変わり、契約内容が変更されたことによるものです。通常は、オーナーが変わっても契約内容はそのまま引き継がれることが多いですが、新しいオーナーの方針によっては、家賃などが変更されることもあります。
実際に家賃が値上げされた結果、滞納してしまい、退去勧告される事例も発生しているため注意が必要です。
リースバック契約中に、自宅を勝手に売却されるケースもあります。
自宅を売却されても、通常は元の賃貸借契約が引き継がれるため、利用者はこれまで通り住み続けられます。
リースバックでは不動産の所有権が買主に移っているため、買主が売却すること自体は違法ではありません。しかしオーナーが変わったことにより、契約内容が変更されるケースもあります。
オーナーチェンジがきっかけで、契約更新や買い戻しの拒否、家賃値上げなどのトラブルに発展するケースが多いのも事実です。
自宅の買い戻しをするつもりでリースバック契約をしたのに、買い戻しができなくなるケースがあります。
買い戻しができない原因はいくつかあります。1つ目は、リースバックの契約時に買い戻しに関する取り決めを契約書に明記していない場合です。リースバックの買い戻しは、契約時に時期や金額を決めておくことが一般的です。
2つ目は、買い戻しの価格が高額なため、支払えないケースです。通常、買い戻し価格の相場は売却価格の10〜30%ほど上乗せした価格になり、別途各種手数料がかかる場合もあります。
また、契約期間中に家賃を滞納した場合も、契約内容の不履行とされ、買い戻しの権利を失うため注意が必要です。
リースバック契約は通常の賃貸借契約と同様、修繕費用は貸主負担が原則です。ただし借主の過失や故意による損傷については借主負担になり、その他契約以降にできた損傷についても、借主負担になる事例があります。
実際には居住中である住居の点検は難しく、損傷の原因がいつのものか判明しづらいため、契約時に特約で修繕費を借主負担とするケースが多いです。そのため、特約を知らずに「修繕費がかからないはずなのに、請求されてしまった」とトラブルになるケースも見られます。
必ずしもリースバック契約ができるとは限りません。
たとえば、住宅ローンの残債が買取価格を上回っている場合には、リースバックは契約できません。なぜなら売却価格でローンを完済できなければ、抵当権を外すことができないため、物件の売却自体ができないからです。
リースバックの申し込み者の中には、すぐに現金が必要だったにもかかわらず、契約できなかったために家を競売にかけられてしまったという事例もあるため、注意が必要です。
親族への相談なくリースバック契約をしたことで、後にトラブルになるケースもあります。
リースバックでは、契約時に想定相続人の同意は必要ありません。そのため、特に高齢の方が子どもなどの同意を得ず、単独で契約を決めるケースが多く見られます。
しかし、親族へ相談なく自宅を売却したことにより、家を相続するつもりだった親族から抗議を受け、後にトラブルに発展したケースもあります。
リースバック契約で、住み続けられると思った自宅から退去を迫られることもあります。
リースバック契約の賃貸借契約には「定期借家契約」と「普通借家契約」の2種類があり、どちらを選ぶかにより、住める期間が異なります。
「定期借家契約」の契約期間は通常2~3年で、更新ができません。定期借家契約でも「再契約」が可能であれば住み続けられる場合もありますが、家賃などの条件が再設定される点に注意が必要です。
一方で「普通借家契約」は更新ができる契約形態で、借主の申し出により同条件での更新が可能であるため、長く住み続けることができます。
長く住み続けられるはずのリースバックで退去させられた事例は、稀に借主側が原因の場合もありますが、多くは知らずに「定期借家契約」を結んでいたケースです。
リースバック契約で失敗しないために、契約前に確実に押さえておきたい4つのポイントを解説します。
これらのポイントを押さえておけば、リースバック契約で失敗せずに済みます。
リースバックを契約する際には、ひとつの事業者だけの査定で決めずに、複数事業者の査定を受けましょう。
ひとつの事業者だけで決めてしまうと、売却価格で数百万円の違いが出ることもあるため、損をするおそれがあります。
複数事業者で査定をすれば、売却価格の相場と適正価格を把握できます。売却価格は家賃にも連動するため、適正な価格で売却することが重要です。
リースバックを契約する前に、家賃などの支払いのシミュレーションを行い、無理なく支払えるかどうかを検討しておきましょう。
ローンの支払いから解放されたにもかかわらず、家賃で家計を圧迫されては元も子もありません。家賃の額以外にも、修繕費など考えられる費用負担について考慮する必要があります。
契約前に支払いの見通しを立て、資金計画を立てましょう。支払いの見通し次第では、売却価格を調整し、低い家賃でスタートする方法も検討できるかもしれません。
リースバック契約の前には、プランや契約内容をよく確認することが重要です。
「なぜこのプランがお得なのか」など、提示されたプランの根拠を確認し、ほかの選択肢の有無についても確認することが大切です。
ほかにも、リースバック契約ならではの抑えておきたいポイントがあります。特に確認が必要なポイントは次のとおりです。
そのほかにも、不明なことはすべて質問し、疑問点をなくしてから契約に臨むようにしましょう。
リースバック契約を決める際には、決して1人で決めず、誰かに相談してから決めることをおすすめします。
相談相手は、なるべく専門知識を持つ人が望ましいです。というのもリースバックは比較的新しい制度でサービス内容も多様なため、不動産取引などの専門知識がないと、適切な判断をしづらいためです。
リースバックを利用したい方には、それぞれ異なる事情と目的があり、各自に適した契約期間や金額を考慮しなければなりません。そのため、不動産取引や金融などの知識を持つ人へ相談できると安心です。
リースバックの問題点と利用のポイントを押さえたうえで、リースバックの契約には事業者選びが重要です。
同じリースバック契約でも、事業者によりサービス内容が異なる場合があるため、注意が必要です。
特に以下のサービスで、事業者により内容が大きく異なるため、契約検討時にご確認ください。
事業者により、契約更新や初期費用、買い戻しの取り扱いが異なるため、自分に合ったプランを複数の業者で比較・検討する必要があります。その中から、信頼のできる事業者を選ぶことが大切です。
リースバック以外のサービスも選択できる事業者を選択しましょう。
物件の条件や利用者の支払い能力などによっては、必ずしもリースバックが最善の解決策ではないかもしれません。そのため、リースバックに限定せず、状況により買取や仲介などほかのサービスも案内してもらえる方が、利用者にとってはベストの選択につながります。
リースバック事業者を選ぶ際には、複数の選択肢を示せるような、提案力のある事業者を選びましょう。
リースバック事業者を選ぶ際には、経営の安定した事業者を選ぶようにしましょう。
もし事業者が倒産すると、オーナーが変わるために契約内容が変更されるおそれがあります。最悪の場合、自宅を競売にかけられ、買い戻しが不可能になってしまうかもしれません。
そのため、規模の小さい事業者や経営の不安定な事業者よりも、基盤が大きく経営の安定したリースバック事業者を選ぶことが重要です。その中でも、リースバックの契約実績の豊富な事業者から選ぶと安心です。