不動産売却のノウハウ
土地を借りて建物を建てる借地権は、あらかじめ契約期間を定めていることがほとんどです。
この契約期間のことを「存続期間」、契約の途中から期限までの期間のことを「残存期間」といいます。
自身の借地権はどういった方法で更新するのでしょうか。
更新を忘れてしまった、など借地権更新におけるトラブルの対処法も紹介するので、事前に確認しておきましょう。
2022年1月6日
借地権には、更新ができるタイプと、更新ができないタイプがあり、それぞれ契約期間が異なります。
1992年に成立した借地借家法に基づく普通借地権・定期借地権なのか、それ以前の旧借地権なのかによって違います。
借地権の種類 | 存続期間 | 契約の更新 | 建物買取請求 | 契約の終了 |
---|---|---|---|---|
旧借地権 | 木造ー20年 鉄骨・RCー30年 |
できる | できる | 正当な事由が必要 |
普通借地権 | 30年以上 | できる | できる | 正当な事由が必要 |
定期借地権 | 50年以上 | できない | できない | 期間満了後に確定終了 |
旧借地権では、存続期間は木造の建物で20年、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の場合は30年です。
契約期間がこれより短い場合、または契約期間を定めていない場合は、木造建築物が30年、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建物は60年です。
契約の更新が可能で、更新後の存続期間も初回の契約時と同様です。
旧借地権の重要なポイントは、借地人は「契約の更新」「建物再築による期間の延長」「期間満了時の建物買取」を地主に求めることができるという点です。
地主はこれらの請求を正当な事由なしに拒否できないため、借地人が希望する限り、半永久的に借地権を更新できます。
なお、契約の更新には一定の更新料が発生します。
普通借地権とは、1992年に成立した借地借家法のなかでも旧借地権に近いものですが、建物の構造にかかわらず存続期間は30年以上です。
また、期間を定めていない契約に関しても30年です。
旧借地権と同様、契約の更新が可能で、地主は正当な事由なしに拒否できません。
また、期間満了時には、地主に対して建物の買取請求(時価)が可能です。
更新後の存続期間については、1回目は20年、2回目以降は10年ですが、地主と借地人の合意があれば、これより長くもできます。
なお、契約の更新には、一定の更新料が発生します。
旧借地権と普通借地権の場合は、更新することが前提のため、地主が契約を満了したい場合は「明け渡し料」を支払う必要があります。
定期借地権では、契約の更新ができない代わりに、存続期間が50年以上と長めに設定されています。
契約期間満了後は、建物の買取請求ができないため、解体して更地で返還する必要があります。
借地権の存続期間が終了したときには、どのような選択肢があるのでしょうか。
更新する場合と更新しない場合について、具体的にみていきましょう。
旧借地権・普通借地権は原則として更新されますが、その方法には3パターンあります。
借地人から地主に請求することによって、成立する更新の手続きです。
借地上に建物が存在し、地主に正当な事由がなければ、地主はこれを拒否できません。以前と同じ条件で契約が更新されます。
地主と借地人が双方合意して進める更新の手続きで、もっとも一般的な形態です。
更新料や更新後の地代について、協議の上で決定します。
地主や借地人が更新の手続きを忘れてしまっていた場合でも、旧借地権・普通借地権であれば法定更新によって自動的に契約が更新されます。
ただし、以下のような条件があります。
更新料については、法律で明確に定められているわけではありません。
しかし、契約書に明記されている場合や、双方の合意で取り決めた場合は、支払う必要があります。
また、周辺の地価が高騰したりして相場が変わった場合は、当然更新料にも影響します。
更新料の目安は、自用地価格(通常の所有権の土地として取引される価格)と借地権割合によって決まります。
更新料の目安 = 自用地価格 × 借地権割合 × 5~10%
ちなみに、借地権割合は地域ごとに決められており、国税庁の路線価が表示されているページで誰でも調べることができます。
参照:国税庁「路線価図・評価倍率表」
借地権の更新料の相場はいくら?計算方法や支払えないときの対策とは
子供が独立したため広い家が必要なくなった、建物が老朽化したので住み替えたい、などの理由で借地権の契約を更新しないということも考えられます。その場合、借地上の建物をどうするか、ということが問題です。
旧借地権・普通借地権では、契約期間満了時に借地上の建物が法定耐用年数以内であれば、地主に買取請求ができます。これを「建物買取請求権」と言います。
建物の買取価格は、建築費ではなく時価です。
建物の時価は、以下のように算出します。
再調達価格 × 残存年数(法定耐用年数ー築年数) × 補正率
法定耐用年数は、木造建築物の場合は22年、鉄筋コンクリート造の場合は47年です。
補正率は、傷み具合や周辺相場などです。
建物の築年数が法定耐用年数を超えている場合は、更地で返還するか、そのままの状態で返還するかを地主と協議します。
地主が更地返還を求める場合は、建物を解体する必要があります。
定期借地権では、期間満了時に借地上に建物が存在していても、契約の更新ができない決まりです。
地主に対して建物の買取請求もできないため、期間満了後は建物を解体して更地で返還する必要があります。
ここでは、借地権の更新時によくあるトラブルについて、いくつかの例をご紹介します。
借地契約のなかには、祖父母の代など古くから続いているものもあります。
また、旧借地権や普通借地権では書面による契約である必要がないため、契約書がない、契約の開始日が分からないといったケースもあります。
この場合は、まずは「借地開始日を推定」する必要があります。
建物登記の建築年月日や、建物所有権の獲得日、戸籍に残っている住民票の獲得日などを参考にして推定します。
次に、借地権の契約形態に応じて、法律の定めに従って存続期間を確定します。
地主や借地人が高齢であったり、相続で代替わりしている場合、うっかり更新を忘れてしまうということもあり得ます。
旧借地権・普通借地権の場合は、忘れてしまっていても自動的に法定更新されます。
定期借地権の場合は、一般的にはその時点で契約期間が終了するものとみなされるため、双方協議の上で時期を定め、建物を解体して更地で返還します。
周辺の地価の高騰や、地主の交代などによって高額な更新料を請求されるケースもあります。
更新料や地代については双方の合意で決定するため、法的には納得のいかない金額を支払う義務はありません。しかし、建物の建て替えや借地権の譲渡には地主の承諾が必要なため、地主との関係悪化は避けた方が賢明です。
弁護士など専門家に相談し、双方が納得のいく更新料の落とし所を探します。
一般的に、更新時期が迫っている借地権の売買は難しいです。
なぜなら、地主の承諾が得にくいだけでなく、住み始めて間もなく更新料の支払いが求められるため、買主からも嫌遠されやすくなるからです。
そのため、売りに出す前に地主に更新料相当額を支払い、借地権の期間を延長してもらうことが必要です。
しかし、不動産を現金化するために売り出すのに、その前に手持ち資金から現金を支払うというのは難しいでしょう。
このような場合には、借地権の取り扱いに精通した不動産会社に相談し、不動産買取で売却するという選択がおすすめです。不動産買取であれば、売主との交渉や更新料相当額の支払いといった煩わしい手続きは必要なく、スピーディな問題解決が可能です。
借地権に関する法改正は約30年前であるため、国内には旧借地権の契約も多数残存していることが推測されます。
相続で権利関係が複雑になることもある借地権は、更新料を誰が払うのか、といった問題も起こりやすくなります。
そのため、売却を考える場合には、取り扱いに精通した不動産会社を探すことが重要です。